漬物男子、田中友規です。
本業であるグラフィックデザイナーのお仕事はもう20年目になりますが、
漬物は4年目ですから、まだまだ新人です。
生の野菜が、塩と昆布と一緒に置いておくだけでまったく別の食べ物に変化するのが面白くて、
こんなに簡単でおいしい台所遊びは、他にはそうそうありません。
炭水化物抜きが良しとされるこの時代に、白米がいくらでも食べられてしまう罪深いお漬物。
ていねいな暮らしをしたい訳じゃなくて、ただただ楽しいし、美味しい。
しかしもう一つ漬物には魅力があって、それは野菜の美しさ。
ちょっとデザイナーっぽい事を書いてしまってお恥ずかしいのですが
見逃せない野菜の美しさにも、すこし目を向けてみてください。
今年の1月。2022年の初漬けは日野菜でした。
日野菜といえば滋賀県の伝統野菜で、およそ500年前から栽培されているそう。
長さは30cmと細長く、味わいは蕪と大根の間で、
上側は鮮やかな赤紫色、根に向かって白色のグラデーションで、他の野菜にはない色合い。
旬の冬には、京都でも手に入れやすい野菜のひとつです。
細くて繊維もしっかりした野菜なので、塩で揉みながら柔らかくして漬けていくのですが
ゆっくりと水分が抜け、Pickelstoneにくるくるととぐろ状に巻きながら瓶詰めすると
最初はぎゅうぎゅうと窮屈そうな顔をしていた日野菜が、徐々に居心地よさそうに
ぴたりと収まってくる。
重石を乗せて、さてどんな変化がおきるだろうか、と眺めていると
あれよあれよという間に水があがって日野菜漬けになるのです。
さて、初夏の雰囲気がでてきたこの時期になって、
漬物瓶から日野菜を引っ張り出してみると
4ヶ月以上も長く漬けていたのですっかり長期発酵、ひね漬けです。
瓶から取り出して、水分をさっと拭き取ると、その萎れた姿がなんとも美しい。
長いまな板を引っ張り出してきて置いてみると、一筆描きの日本画のようで、
目が離せなくなります。
よくよく見てみると、普段捨ててしまいそうな根っこ、
そして葉の付け根の部分は植物の生命力そのもの。
真冬に息吹く力強い日野菜の味が一番味わえる部分はここだと、直感で伝わってくるのです。
日野菜には独特の風味と辛み、苦みがあり、葉も刻んで添えるのですが
日野菜は切り方によってまた味わいが変わります。
極薄でも輪切りでも、縦割りもまた食感が良い。
漬物は時間を超えて価値があがり、風合いも、味わいも変わる。
単純極まりないこの野菜の塩漬けが、アートのように思えるわけです。
無名のアーティストを支えるパトロンのような気持ちで、
今日も旬の野菜をスカウトにし行ってきます。
「きみ、うちで塩漬けになってみないか?」
市場で野菜に話しかけている男がいたら、それが僕です。
田中友規
料理家・漬物男子
東京都出身、京都府在住。真夏のシンガポールをこよなく愛する料理研究家でありデザイナー。保存食に魅了され、漬物専用ポットPicklestoneを自ら開発してしまった「漬物男子」で世界中のお漬物を食べ歩きながら、日々料理とのペアリングを研究中。
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