こんにちは。料理人の川口屋薫です。
今日のお話は「山芋」です。

山芋は、古来、山野で採れる芋の総称で、大きく分けると自然薯、大薯、長芋の3種類です。 秋から冬にかけて収穫されるため、今は旬の時期にあたります。
晩秋の季語にもなっている「とろろ汁」は、江戸時代、東海道中の旅人や俳人松尾芭蕉にも愛された味だったそうです。
「とろろ汁」の作り方は、すりおろした自然薯などの山芋をすりおろし、出汁、味噌、卵で味をつけて、滑らかな食感に仕上げます。味噌の代わりに醤油で作ることもありますが、滋味あふれる味であることは間違いありません。
麦飯の上にかけて、口の中でズズッ…心と体を優しく包みこんでくれるような定番食です。

そして、山芋は「山のうなぎ」と異名を持つほど栄養が豊富で、胃腸の調子を整える、消化を助けて疲労回復させる働きがあります。生のまま食べることができるのは、消化酵素を多く含んでいるため。でんぷん質を分解する働きがあることにより、生で食べても胃がもたれないのです。
暦生活「今日の読み物」櫻井大典さんの記事でも、潤いを補う食材の中に山芋が紹介されています。

山芋は、自然薯、大和芋、山の芋、つくね芋、丸芋、イチョウ芋など色々な種類があり、また、御所芋(ごせいいも)、伊勢芋、丹波芋、沖縄芋など、地方によって呼び名が変わることもあり、どの山芋に出会えるのかも楽しみです。

山芋の中でも特に歴史が古いのは、日本原産の自然薯。縄文時代から、主食として自然薯が食べられていたそうです。平安時代は、貴族の饗宴や正月の御斎会で出された記述が残されています。
自然薯を薄く切り、甘味料として用いられていた植物の甘葛(あまづら)の汁で煮た料理を「芋粥」と言いますが、芥川龍之介作品「芋粥」の主人公が、芋粥をたらふく食べたい!と夢を持つほど貴重な食べ物でした。
現代では山芋は「かるかん」、「薯蕷(じょうよ)饅頭または上用饅頭」など和菓子の材料として使われています。薯蕷とは、山芋のことで、すりおろした自然薯やつくね芋が入った生地にあんこを包んで蒸しあげた饅頭です。山芋を使うと、皮はしっとりとやわらかい食感になり、ほのかな芋の香りを感じます。御祝い用の紅白饅頭もこの製法で作られています。

さて、今日のレシピは「とろろ」を使った簡単スープ料理を紹介します。よかったら作ってみてください!
洋風とろろスープ

材料(2人前)
•長芋 80〜100g •かぶ ½〜1個(あれば) A(みじん切りにします) •にんじん 30g(約⅓本) •セロリ 30g(約⅓本) •白ネギ 30g(約⅓本白い部分) B(一口大に切ります) •豚うす切り肉 3枚 •鶏モモ肉 ½枚 •ベーコン 2枚 •お好みのきのこ 各½パック •レタス 2枚 •茹でたモロッコいんげん豆 少々(あれば) •イタリアンパセリのみじん切り 少々(あれば)

作り方(煮込時間約20分)
①スープ鍋にオリーブオイル大さじ1とAを入れて軽く炒めてから、B、塩小さじ½、胡椒少々を加えて、軽く炒めます。 ②水2カップ、一口大に切ったかぶ、きのこを加えて煮ます。沸騰したら弱火にして、かぶに火が通るまで煮ます。 ③手で適当な大きさにちぎったレタスを入れて、火をとめます。スープの塩加減は味見をしながら調整してください。 ④スープ皿にもり、イタリアンパセリを少々、すりおろした長芋をたっぷりのせたら完成です。 ポイント •にんじん、セロリ、長ねぎをみじん切りにすることで、野菜の出汁が早くでます。 •2〜3種類の肉を使うと深みのある出汁ができます。肉ときのこは、お好きな種類や寄せ鍋で余った食材をお使いください。 •彩り野菜に、モロッコいんげん豆やブロッコリーを添えると良いです。 •定番の寄せ鍋にとろろをのせても、見た目や味が変わるので、おすすめです。


川口屋薫
料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁
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