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めまいの原因と対策

旬のもの 2023.04.03

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春が過ぎ、梅雨が近づいてくると増える不調の一つにめまいがあります。一言でめまいといってもその症状は様々で、歩くとふわふわして歩き辛い、座っていると後ろに引っ張られるような感覚になる、目をつぶるとぐるぐる回るなど多様な症状があります。

症状が軽い場合は、目を閉じて休めば良くなることが大半ですが、重度の場合だと、始終、車や船に乗っているような、ふわふわとした感覚になります。少しでも動くと倒れそうになり、ひどくなると、吐き気、嘔吐、発汗、昏倒なども見られます。

また、めまいは多くの疾患でみられる症状なので、様々な可能性を考慮する必要があります。経過が長く、ふらつき、頭痛、動悸、血圧の上昇などが見られる場合は、高血圧が関与している可能性があり、経過が短くふらつき、動悸、倦怠感、顔色が悪い場合などは貧血が関与している可能性があります。

急性の発作性のめまいで、吐き気、耳鳴り、聴力減退、目がブレるなどがあれば、内耳性のめまいも多いようです。めまいや頭痛が次第に増強し、嘔吐、目がブレる、目をつぶって直立できないのは、脳腫瘍の疑いも考えられます。

めまいを中医学では、『眩暈(げんうん)』といいます。『眩』は目が霞むこと、『暈』は頭がふらつくことを指します。これらは同時に出現するので、合わせて『眩暈』です。

中医学的には、大きく分けると、『肝陽上亢』(かんようじょうこう)、『腎精不足』(じんせいぶそく)、『気血両虚』(きけつりょうきょ)、『痰湿』(たんしつ)、『瘀血』(おけつ)の5つのタイプがあると考えます。またこれらのタイプは同時に発症する場合もあります。

「肝陽上亢」によるめまい

肝陽上亢はストレスが関与するめまいで、主に怒りや悩みを抱えている方に多く見られます。代表的な症状はめまいの他、口の苦味、高音の耳鳴り、熟睡できない、夢をよく見る、嘔吐、尿の色が濃い、便秘、舌の先や縁が赤い、舌の苔が黄色など。治療原則は、『平肝潜陽』で、高ぶった神経を鎮める対策をします。

リラックスが鍵なので、深呼吸する、自然にふれる、早く寝る、お風呂に入って緩める、なにか笑える、心が和むエンタメに接するなどを心がけてください。

食養生では、辛いもの脂っこいもの、スパイス、コーヒー、飲酒を控えて、興奮した五臓の肝を落ち着ける働きがあるものを選びます。菊花茶、ラベンダーティー、クレソン、せり、セロリ、豆苗、トマト、ピーマン、マッシュルーム、パパイヤ、穴子、クラゲなどを。

「腎精不足」によるめまい

次に、腎精不足で起こるめまいは、五臓の腎が加齢や過労、病気や手術、妊娠出産などにより弱ったため起きるめまいです。これは脳が正常な活動を維持できなくなった状態です。ふらつき、めまい、気分の萎縮、記憶力の減退、腰のだるさ、足腰に力が入らない、低い音の耳鳴りなどが見られます。

腎精不足は、手足がほてる、喉が渇くなどの、『腎陰虚』(じんいんきょ)と呼ばれる潤い不足の症状や、冷えや夜間多尿など、『腎陽虚』(じんようきょ)という温める力が不足したときに見られる症状に分類されます。

腎陰虚の場合は陰を補う作用を持った、アスパラガス、オクラ、エリンギ、きくらげ、鮎、イカ、カニ、ホタテの貝柱、牡蠣、鴨肉、豚肉、卵、ヨーグルトなどを。腎陽虚の場合は陽気を補う、ニラ、栗、クルミ、キャベツ、なた豆、羊肉、エビ、太刀魚、ムール貝などを。

腎陰虚では、サウナやホットヨガ、激しい運動などでの発汗のしすぎは、症状を悪化させるので避けてください。また辛いものやスパイスを多量に使うことも避けましょう。腎陽虚は冷えが大敵なので、靴下を履いて、素肌をさらさないようにし、入浴もしましょう。特に下半身の防寒には気をつけましょう。

腎陰虚、腎陽虚どちらにもおすすめの対策は、歩くことやかかと上げなど、足腰を使うことです。階段を使う、一駅歩く、休日の散歩やピクニックなど取り入れてください。

「気血両虚」によるめまい

気血両虚の場合は、エネルギーや栄養が足りずに、脳が正常に働かず、めまいが起きると考えます。活動すると悪化するめまいに加え、息切れ、動悸、顔色悪い、熟睡できない、記憶力低下、手足に力が入らない、声が小さい、話すのが億劫、消化が悪い、食欲不振などが見られます。舌の色は淡く、ぼてっとした形になり、歯型が見られることもあります。

治療原則は、補益気血、健運脾胃で、不足した気血を補いつつ、胃腸の消化吸収能力を回復させます。気血を補うには、イワシ、あんこう、鯖、タコ、たら、ブリ、ます、カツオ、牛肉、うずらの卵などがおすすめ。胃腸機能回復には、冷たい、味の濃い、脂っこい飲食を避けましょう。サラダやスムージーに、肉という食事よりも、米と味噌汁と魚というような料理をできるだけ食べるようにしましょう。温かくてあっさり味の食事を心がけ、早寝するようにしてください。休日は用事を詰め込むのではなく、何もしない日を作ることも大切です。

「痰湿」によるめまい

痰湿によるめまいは、べっとりした『痰湿』(たんしつ)という病理産物が邪魔して、エネルギーや栄養である、気や血が脳に届かなくなり、起こります。頭がぼんやりして重く、頭重がある、胸が塞がれた感じがする、吐き気、痰が多い、食欲不振、よだれ、動悸がする、すぐ眠くなる、体が重い、舌は白い苔でべったり。治療原則は、燥湿化痰。不要なものをなくす対策をします。

運動やサウナなど適度な発汗を促す行為を取り入れましょう。食事は特に水分や冷たいもののとりすぎを避けて下さい。お刺身やサラダよりも、焼き魚と温野菜にしてください。

毎晩氷入りのハイボールや、冷たいビールを飲んでいる人は、お酒はどれも痰湿の元になるので、お酒を減らすかやめるほうがより良いのは言うまでもありませんが、せめて温かい日本酒や焼酎お湯割り、冷やしてないワインなどを選びましょう。食材では、黒ごま、かぼちゃ、からし菜、たけのこ、えのき、あおさ、のり、昆布、クラゲ、アサリ、はまぐり、牛タンなどが良いでしょう。

「瘀血」によるめまい

瘀血によるめまいは、血の状態が悪くなり、栄養やエネルギーが脳に届かず、脳の正常な機能を低下させ起こります。この場合は、めまいに伴い、頭痛が顕著です。その他、不眠、健忘、顔色が暗い、しみやくすみが多い、経血にレバー状の塊が交じる、舌は暗く、黒いシミなどが見られる場合もあります。治療原則は、活血清絡。血の通り道をきれいにしつつ、血の質をよくして流れやすくします。

じっとしている時間を減らし、屈伸、肩回しを取り入れましょう。食事は脂っこいものを避け、塩味よりもお酢を使うようにして、黒豆、小松菜、納豆、ししとう、ブルーベリー、クランベリー、プルーン、鮭、タラ、ニラ、パセリなどを取り入れましょう。

めまいは、多種多様な要因から様々な症状となり不調を作り出します。めまいの裏には病気が隠れていることも少なくないので、医師の診断をうけることをまずはおすすめします。そのうえで、食習慣、生活習慣の中から改善出来ることを始めてみてください。

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櫻井大典

国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。

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