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歯茎の腫れや痛みに注意

旬のもの 2023.05.08

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中医学で歯茎の腫れなど歯周病を考えるとき、それを単に口だけの問題として捉えるのではなく、体全体の問題として考えます。歯を磨かずに寝てしまうとか、ちゃんと磨けていない、歯ブラシを交換していないなどの問題は、それとして対応が必要ですが、それ以外に、偏った食事による“胃の湿熱*”が原因となる、『炎症タイプ』、歯茎に栄養と潤いを届けている陰*や血*の不足による『陰血不足タイプ』などが考えられます。

*湿熱・・・水分、脂っこいもの、味の濃いもの、辛いもの、酒などの摂りすぎによって溜まったドロドロの病理産物
*陰・・・主に体液の事
*血・・・「けつ」と読む。血管内を流れる赤い液体で、細胞に栄養を届けているもの。同時に精神情緒の安定を担っている。

「炎症タイプ」のトラブル

日々口にするものの中に、甘いものや脂っこいもの、辛いもの、味の濃いものが多く、野菜が少ない場合や、お酒やたばこなどが多いなど、中医学で考える『湿熱』になるものが多い習慣の方々には、その熱により、歯ぐきが腫れたり出血したり痛みだしたりする、炎症性のトラブルが生じることがあります。

また、口周りの肌荒れや吹き出もの、唇の荒れ、口角の切れなどもよくみられます。熱がこもっているので、冷たいものを欲しがり、口が渇きやすく、口臭があり、便秘や粘性のある臭い便が出やすくなります。舌を診てみると苔がべっとりと舌を覆っていることが多いです。

この場合は、まず食習慣を改善することが不可欠となります。揚げ物はお菓子と同様、嗜好品と考え、たまににする。辛いものを控えて、薄味、あっさり味の食事を意識し、腹八分目にとどめておくなどが大切です。加えて、加熱した葉物野菜をたっぷりととるようにして、腸内環境を整え、不要物を排出できるよう、胃腸を整えましょう。

熱がこもっているからといって、冷たいものや過剰な水分摂取は逆効果です。これも胃腸の機能を落とす事に繋がり、不要物をちゃんと排出できなくなりますので、温かく消化に良いものをよく噛んで食べましょう。

炎症タイプのおすすめ食材は、海苔、あおさ、わかめ、そば、きゅうり、ゴボウ、セロリ、豆苗、なす、ニガウリなどの炎症をとる食材に加え、不要物を排出する里芋、こんにゃく、豆乳、春菊、大根、筍、昆布、あおさ、アサリ、ふきなどを積極的に摂りましょう。

「陰血不足タイプ」のトラブル

中医学が考える『血(けつ)』や『陰』は、身体の各部に栄養と潤いを届け、その機能を維持しています。血や陰が不足すると、組織は弱くなり張りや潤いも保てません。もちろん歯ぐきやその周辺組織にも、血による栄養供給がなされているので、足りなくなれば正常に機能してくれません。

陰血の不足による口腔内のトラブルでは、腫れや痛み、出血などがみられます。加えて、歯ぐきがやせ細り、歯の根っこが見えてしまうこともあります。陰や血が不足すると、歯茎や口の中だけでなく、肌や髪も乾燥しやすく、便も固くなります。

陰血の不足はそれを作り出す胃腸を元気に保つことがとても大切です。湿熱による炎症の時と同じように、葉物野菜を中心としたあっさり味の食事を、腹八分目が基本です。食欲がない時などは「おかゆ」を食べてください。米はそのままで胃腸薬になってくれます。生もの、冷たいものは避けるようにしてください。

加えて、陰を補う山芋、黒豆、豆乳、オクラ、トマト、ほうれそう、ぶどう、えのき、きくらげ、あさり、イカ、牡蠣、豚肉、卵、血を補うごま、キャベツ、人参、ほうれん草、ぶどう、タチウオ、鶏肉、牛肉、ウズラの卵なども摂りましょう。

陰血といった、体の潤い成分が不足しがちな場合、気をつけたいのは過度な発汗です。汗をかくことは“デトックス”などとよく言われ、体に良いようなイメージがありますが、陰血不足の方には逆効果です。

上に書いたような、不要物である湿熱が溜まった炎症タイプにとってたまった不要物を排出する発汗は良い効果もありますが、体内に必要な潤いや血が不足している人は、より状態を悪化させてしまいます。サウナが流行っている昨今、合わないタイプもいらっしゃるのでご注意ください。それと、早く寝ることも陰血を守るためには重要です。10分でも早く寝るよう日々心がけてくださいね。

歯ぐきなど口腔内のトラブルを、口だけの問題と考えずに、しっかり生活習慣から見直すことで再発を防止できますし、歯磨きだけではケアできない部分もしっかり対応できるようになりますよ。

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櫻井大典

国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。

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