漬物男子 田中友規です。
毎日なにかしら「今日は○○○記念日」というのがあるようで漬物の日はあるのかな?と調べてみたらちゃんとありました。
漬物の発祥と言われる愛知県の萱津神社では毎年8月21日に「香乃物祭」なる行事があり、それに由来して漬物業界では毎月21日を漬物の日と定めたそう。
神社ですから漬物の神様もちゃんといて「鹿屋野比売神(かやぬひめのかみ)」を祀っており、大昔、海の藻塩と野菜を甕に入れて神様にお供えしたところ、腐らず保存食となったとか。
さぞかし不思議だったでしょうね。塩に漬けておくだけで、保存がきいて、美味しくなって。
夏の野菜は恐ろしいもので、きゅうりや茄子は1日収穫が遅れるとどんどん育ちますから次々収穫しなきゃいけないのだけれど、それこそ塩漬けにしておけば何年も保たせることができるわけです。冷蔵庫のなかった時代には、塩漬けで保存された食べ物はまさに神の業だったんですね。
一方、我が家の冷蔵庫にも神の業で保存されたお漬物がいっぱい。漬物の日を機に、何があるのか掘り出してみると出るわ出るわ・・・ついつい長期保存ができてしまうばっかりにタッパーだらけ。きっとうちにいらっしゃる神様も呆れていますね。
そうそう、我が家にも比叡山からいらっしゃった漬物の神様がおりまして疫病退散のご利益がある元三大師(がんざんだいし)さまのお札です。
一見おそろしい姿のお札ですが、その起源は平安時代。疫病が流行していたある年に、並外れた霊力を持っていた元三大師さまは村人を救うために鬼の姿に変身し、その姿を弟子に描き写させ、疫病退散のお守りにしたと言われており、いまでもそこかしこの民家に貼られているのです。
その元三大師さまがなぜ漬物と関係があるかというと、「定心房漬(じょうしんぼうづけ)」というタクアンの原型を考案したのだとか。定心房漬はいわずもがな発酵食品ですから乳酸菌も豊富。ビタミンB1、ビタミンC、カリウムなど健康に直結する栄養素の宝庫です。きっと疫病もこの漬物には敵わなかったのでしょうね。
さて漬物の日が良い機会になって、我が家に余っていた野菜を全部つけてみることにしました。もしかしたらまだ世の中にはない新しい漬物を考案できるかも?エシャロット、にんにく、しょうが、ニラ、ねぎ・・・
よくよく見ると、いわゆる宗教上の理由から避けるべき「五葷(ごくん)」と言われる野菜ばかり。元三大師さまには悪いけど、これを漬物にしたらすごい漬物ができるのでは・・・!それぞれを細かく刻み、甘みを加えた醤油で漬け込みます。風味に酢と白胡麻をプラスしてさっと一煮立ちさせて、冷蔵庫で冷やして完成。夏バテしそうな今の時期にぴったり、名付けて「五葷漬け」です。
豚しゃぶのつけだれのアクセントから、シンプルにお粥にのせても良さそう!しゃきしゃきで、臭みも辛味も強くて、これはもう疫病退散間違いなし。ヒットの予感です。これは罪深い美味しさ。
漬物の日にいままでにない漬物を生み出すことができたことに感謝。
元三大師さまに少しは近づけたのではないでしょうか?
ちなみに元三大師さまの事をさらに調べてみると「おみくじ」も考案なさったそうで、平安から令和まで続くスーパーロングヒット商品を3つも生み出しているとんでもない名プロデューサーでございました。
う〜ん、足元にも及ばなかった漬物男子、これからも精進いたします。
田中友規
料理家・漬物男子
東京都出身、京都府在住。真夏のシンガポールをこよなく愛する料理研究家でありデザイナー。保存食に魅了され、漬物専用ポットPicklestoneを自ら開発してしまった「漬物男子」で世界中のお漬物を食べ歩きながら、日々料理とのペアリングを研究中。
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