月経痛は無いのが正常な状態です。
月経痛のお悩みでのご相談は少なくありません。女性の一生では450回程度の月経があると言われています。この月経は本来、耐えられない痛みを伴うものでは無いというと、驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。
そもそも痛みとは体からの危険信号です。なんらかのトラブルが起きていることを知らせるシグナルですので、本来は痛み止めで感じなくさせれば良いものでは無いはずです。
月経痛の大きな原因は、不要な経血を排出するために起きる収縮運動による痛みです。月経痛は、子宮収縮を促すプロスタグランジンという痛みを感じさせる物質が分泌されることに起因すると考えられており、収縮が激しくなればなるほど痛みが悪化すると言えます。また、西洋医学では、子宮口の狭さ、冷えやストレスによる血流障害からくる不要な内膜の排出低下が痛みの悪化に影響すると考えられています。
正常な生理は周期が概ね28日で安定しており、期間3−7日で1回の月経量は20−140ml程度、そして痛みは、市販の鎮痛剤を使えば十分収まる程度が良い状態とされ、痛みはなければより良いと考えます。
中医学で考える月経痛は、瘀血(おけつ)といい血のめぐりが悪くなり痛みを発生するものとして考えます。瘀血になるには様々な原因がありますが、今回はその中でも月経痛の場合に多く見られる、①生活習慣による瘀血、②冷えによる瘀血、③元気や栄養不足による瘀血、④ストレスによる瘀血の4タイプを例として取り上げます。
生活習慣による瘀血
まず①の生活習慣による瘀血は、運動不足、喫煙、睡眠不足や不眠などが原因となります。瘀血の月経痛の特徴は、月経2,3日前から痛みを感じ、下腹部の強い痛みで、レバー状の塊が出ると和らぐ痛みなどです。経血の量は多く(1日に10回以上ナプキンを交換)、キリキリと刺すような痛みを感じます。改善のためには、体を冷やさないように心がけ、血流を改善する運動や食材を取り入れましょう。
生ものや体温より冷たい飲食、そして脂っこいものをできるだけ避けて、玉ねぎ、ニラ、ネギ、にんにく、黒きくらげなどを加熱して積極的に食べましょう。また、小豆、納豆、三つ葉、みょうが、もも、カタクチイワシ、鮭、サンマ、たら、マグロ、紅茶、お酢なども血の巡りを良くしてくれるので、日々取り入れましょう。
日常的な運動不足を少しでも改善させるため、スクワットを1日まずは10回からはじめましょう。
冷えによる瘀血
次は②の冷えによって血のめぐりが悪くなった陽虚タイプの瘀血。中医学には、「血は、温めることを喜び、冷えることを嫌う」という言葉があり、血は温めるとめぐりやすくなり、冷えると流れが悪くなると考えます。流れが悪くなると、瘀血になり痛みが発生します。
このタイプの月経痛は絞られる様な痛みで、冷やすと悪化し、温めると痛みが和らぎます。もしくは、悪寒を伴った弱い痛みが断続的に続くこともあります。痛みは初日から始まり、痛みが激しいときは経血の色は暗くなり、軽いときは薄い赤色になります。月経中に寒気を訴える方もいます。
対策は、とにかく冷やさないこと。入浴もシャワーではなく湯船に浸かるようにし、体温より冷たい飲食を控えましょう。サラダやお刺し身もできるだけ控えるほうが良いでしょう。特に月経中にアイスなどを食べることは冷えによる血流悪化を助長させるので禁止です。暑いときも必ず一枚羽織るものを持って出かけるようにし、靴下を履いて足首を冷やしすぎないように注意しましょう。
体を温めるには、もち米、いんげん豆、なた豆、クリ、くるみ、生姜、なのはな、にら、にんにく、ネギ、エビ、なまこ、いわし、うなぎ、ムール貝、ニシン、鹿肉、羊肉、シナモン、花椒、辛子、胡椒、紅茶などを適宜摂りましょう。
ストレスによる瘀血
次は③ストレス過多な気滞タイプの瘀血。ストレスは体の緊張を生み出します。すると血流も悪くなるし、子宮の動きも悪くなり、痛みが増します。気滞タイプの痛みは、痛い月経とそうでない月経との差が大きく、生理前に胸が張って痛んだり、お腹にガスが溜まりやすかったりします。その他、PMSの症状が多く、生理が始まると痛みが楽になるのも特徴です。
気滞タイプは、生真面目で、完璧主義な方に多いと感じます。このタイプは何事もまずは深呼吸から始めましょう。気を巡らせるには香りの良い食材がおすすめです。しそ、三つ葉、パセリなどは積極的に取りましょう。グレープフルーツやオレンジ、みかんなど柑橘類の香りも良いです。アロマ、入浴剤、香水なども活用しましょう。
気血不足による瘀血
④は気血不足による瘀血です。血の量が足りずに、血流に勢いが無く滞ったり、血を巡らせるエネルギーである気が不足して流れにくくなったりする状態です。エネルギーである気や栄養を運ぶ血が足りないので、総じて疲れやすく、月経時に体調を崩しやすいです。気血不足の瘀血の痛みの特徴は、月経後半から鈍くて重い、しくしくとした痛みがあり、月経後も痛みが継続します。また痛いところを擦ると痛みが和らぐのも特徴的です。
めまいやふらつき、月経中及び月経後の頭痛などもよく見られます。月経時は、眠くてだるくて動けなくなることもあります。経血は薄い赤色で、サラサラしていることが多いです。
このタイプへの対策は、まずしっかり休息をとること。ホントは“目指せ21時消灯!”と言いたいところですが現実的には難しいでしょうから、日付が変わる前には寝ているように心がけましょう。そして、エネルギーや血に変わる、イモ類、米、黒糖、なつめなどを食べましょう。もし食べられるのなら、レバーや豚肉、鶏肉、卵などの動物性食品も適宜取りましょう。
生理痛はないのが正しい状態です。痛みが次第に悪化する、生理痛とともに周期もみだれてきた、経血に塊が増えてきた、痛み方が前と違ってきているなどがあれば婦人科で検査を受けましょう。痛みは体の不調のサインなので、軽くても鎮痛剤が必要な痛みがあるのなら、一度婦人科で診てもらい、対策に漢方も活用すると良いですよ。月経痛に良い漢方はたくさんあるので、お困りの方は早めに専門家にご相談ください。
櫻井大典
国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。
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