おはようございます、こんにちは。編集者の藤田華子です。
秋らしい澄んだ空を眺めていたらお腹が減ってきて、「口果報(くちかほう)」という言葉が浮かびました。
女優・随筆家の沢村貞子さんが、お仕事がどんなに忙しいときも台所に立ちつづけ、日々の食卓の参考にとつけはじめた『わたしの献立日記』という名著で知った言葉です。著者がいかに美味しいものが好きだったのか--しかし決して高級なものばかりを好んだわけではなく、“食いしん坊”だったのかが伝わってきて、読み進めるうちに食べる楽しみがどんどん増していく一冊なんですよね。そのなかに、こんな記述が。
「口運がいいというのは、金運、女運などからきた俗語らしいが、耳障りのいい言葉は、口果報」
「こんな珍しいものがいただけるなんて、口果報だね」
「いま、食べたいと思うものを、自分に丁度いいだけ」
沢村貞子『わたしの献立日記』より

ああ、なんて豊かなんだろうと惚れ惚れしながら読みました。
この「口果報」を実感するシーンのひとつが、まさにいま、「食欲の秋」ではないでしょうか。
秋の到来とともに、米や野菜、果物など自然の恵みである農作物がたくさん収穫され「旬の味をいただけるなんて口果報だなぁ」と嬉しくなります。

新米、きのこ、さつまいも、秋刀魚、りんごや柿といった果物…ああ、どれも美味しそう!
調べてみると、「食欲の秋」は作物がよく収穫されるからというほか、私たちの体のメカニズムにも沿った理由があるようなのです。

秋になるとだんだんと日が暮れるのが早くなり、日照時間が短くなっていきますよね。それによって、日光を浴びることで分泌される“セロトニン”という物質が私たちの体にとって足りない状態に。セロトニンは食欲を調整する“ドーパミン”の動きにもかかわる働きをするので、体が栄養を蓄えようと食欲が刺激されるというわけです。自然の摂理のなかで、本能的に「食欲の秋」が成り立っているんですね。秋になったらしっかり食べて、ぐっすり眠り、来るべき寒い冬に備えましょう。
(もちろん、適度な運動「スポーツの秋」も忘れずに!)

ちなみに私の実家では、食卓に旬を取り入れる習慣があり、庭にある落ち葉やススキなどを飾って秋の味覚を楽しむ日がありました。きれいに洗った紅葉を秋刀魚に添えたり、コスモスを花瓶に生けてちょこんと飾ったり。ぜひみなさんも、食卓から秋を満喫してみてください。


藤田華子
ライター・編集者
那須出身、東京在住。一年を通して「◯◯日和」を満喫することに幸せを感じますが、とくに服が軽い夏は気分がいいです。ふだんは本と将棋、銭湯と生き物を愛する編集者。ベリーダンサーのときは別の名です。
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