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秋茄子あきなす

旬のもの 2022.10.26

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漬物男子、田中友規です。

トウモロコシ、ししとう、茄子など
夏の野菜が我が家の冷蔵庫から去っていくのを見送りながら
そろそろ秋の食材を迎え入れる季節になりました。

食欲の秋とはよくいったもので、
海では戻り鰹に秋刀魚。
山では松茸、栗、銀杏。
果物なら柿、梨、葡萄
畑には南瓜にさつまいも、そして秋茄子。

そろそろ会いたいと思ってたんだよ!と
スーパーの店頭で一年ぶりの再会に、皆々に声をかけてまわります。

気象が不安定ではあるものの、それでもなお豊かな日本の実りには感謝しかありません。

おや?お盆にはご先祖様はたしか長茄子に乗ってお帰りになるはずなのですが
不思議なことに、秋茄子はまた旬がやってきます。

去ったと思ったら、また美味しくなって戻ってくるなんて
他の野菜ではあまり聞いたことがありません。

夏の茄子は燦々と太陽を浴びて、身が詰まり熱を加えても煮崩れにしくいので
大きく切って強火で炒めるような料理に向いています。

一方、秋の茄子は皮も薄く水分が多くて身も柔らかです。
味わいもより繊細で、さっぱりした味付けがよく合うわけです。

とりわけ手軽すぎる焼き茄子はこの時期の定番で、
皮に数本包丁を入れて、魚焼きグリルに10分ほどいれるだけですから
これはもう料理といえるのはわかりませんが、秋はこういうのでいいんです。

写真提供:田中友規

みずからの水分で蒸された茄子はくったりとして、皮を剥くと中から立ち上る湯気。
まるでサウナ上がりのような、のぼせた顔を覗かせます。 

秋茄子はうまい。見ているだけでうまい。
だから余計なことはせずに、おろし生姜と醤油。
ごま油とか、出汁醤油とか、七味唐辛子などをついついかけてしまいがちですが
余計なことはしなくていいのです。
熱々で香りが立っているうちに、はふはふはふ。

写真提供:田中友規

油断しているとあっという間になくなってしまうので、
ちょっと多めに焼いて冷蔵庫で一晩おくと、また違う味になります。
キャラメルのような焦げた甘い香りが身になじんで甘みが増し、
もはや醤油すら必要ありません。

焼きたてもうまい、冷やしてもうまい。
夏も、秋も、うまい。
もうすべての茄子を焼き茄子にしたい。

すべての茄子?そうか!
田楽に使う丸茄子を使ったら
味わったことのない焼き茄子ができるかもしれない・・・

思いついたら即行動。

丸々とした茄子の皮をじわりじわりと焦がしていくにつれ、
楕円に緩んで輪郭が溶けていきます。
なにしろ90%以上が水分ですから、
焼くことによって味は濃縮されて、
長茄子よりもずっとジューシーな焼き茄子になりました。

写真提供:田中友規

濃い。旨味がどーんと押し寄せる。

あれ、花鰹をかけたらもっと・・・・美味い。
さては、ニンニク醤油をかけたら・・・美味い。
もしかして、辣油と花椒塩だったら・・・美味い。
わかっちゃいるけど、オリーブオイルと塩でも・・・美味い。

ああ〜・・・焼き茄子はおろし生姜と醤油でいい、などとカッコつけて申し訳ありませんでした。
長茄子はあっさりとシンプルにいただくのが良いですが、
濃厚な丸茄子は世界中の調味料とも仲良しだったのです。
コミュ力が高い。

先入観とは恐ろしいもので、焼き茄子といえば長茄子と思い込んでおりました。
世界には1000種類の茄子があるそうで、まだまだ研究の余地がありそうです。
来年あたり、焼き茄子研究家という肩書きが増えている、かもしれません!

写真提供:田中友規
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田中友規

料理家・漬物男子
東京都出身、京都府在住。真夏のシンガポールをこよなく愛する料理研究家でありデザイナー。保存食に魅了され、漬物専用ポットPicklestoneを自ら開発してしまった「漬物男子」で世界中のお漬物を食べ歩きながら、日々料理とのペアリングを研究中。

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