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ポトフ

旬のもの 2023.11.20

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こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は寒い日にほっこりあたたまる「ポトフ」のお話です。

日の入りが早くなり、一番星がみえる家路の途中。どこからともなく晩ごはんの匂いが漂ってくる。つい何処からだろうかと鼻先でたどりながら「これは…肉じゃがかな?」「この家はカレーだな」などと想像しながら歩く。

朝晩の冷え込みがグッと深まるこの時期になると、私はどこかの台所から流れてくるごはんの匂いに妙に敏感になる。寒さのせいか、誰かが晩御飯を作って待ってくれている家が恋しいのかもしれない。何よりこの時期は煮込み料理が増えてくるからか、いっそう匂いに気付きやすい気がする。

煮込み料理の一つに「ポトフ」がある。日本でも根付いている家庭料理で、ウインナーや野菜をコンソメスープで煮込んだものを想像する人が多いだろう。
母もよく作ってくれた料理だ。畑でとれたじゃがいも、人参、玉ねぎはスタメンで、白菜やブロッコリーなどがアドリブで入ることもある。煮込まれたウインナーは私の大好物で、何個でも食べたい。味付けは市販のコンソメスープだった。

ポトフは元はフランスの家庭料理の一つで、鍋に肉や野菜を入れて長時間煮込んだものを指すそうだ。ポトフは「pot(ポット)」→鍋、「fu(フ)」→火を意味し、「火にかけた鍋」という意味らしい。本場のポトフはかなりシンプルな味付けだそう。牛肉や野菜など素材の味を活かしながらハーブや塩胡椒で味付けをするだけ。食べ方も日本と違い、食材とスープは分けられ、ゴロゴロとした食材は食べやすい大きさにしてメインディッシュに、マスタードなどでいただく。煮汁は別の皿でスープとしていただくそうだ。ちなみに鍋に余ったスープは「ブイヨン」となり、他の料理に使われることもあるという。

料理の工程も簡単で、失敗の少ないポトフ。以前は母に倣って市販のコンソメスープで作っていたが、最近はそれに頼らないことも覚えた。市販のものを使わずとも、ポイントを押さえれば十分美味しいと分かったからだ。

使う材料は、母が作っていたのと同じく、じゃがいも、人参、玉ねぎ。そして料理の彩りにも良く、風味を立たせてくれるセロリが私のスタメンだ。
それぞれゴロリと切り揃えた食材を、油で焼き付けて香りを立たせていく。お好みでブロック肉やウインナーを入れ、生姜やニンニクを隠し味的に少々使う。そこに水を静かに流し入れ、ローリエやブラックペッパーでコトコト煮込む。味をみながら塩、時には醤油で味を整えれば完成だ。

それぞれの野菜をソテーすることで旨みをアップさせ、香味野菜を数種類使うことで香りに奥行きを持たせる。優しく煮込むことで、それぞれの食材の味が煮汁に溶け込んでいくのだ。
スープを一口食べれば、野菜たちの味がひとつひとつじんわり感じられ、それが体に染み込んでいく。

一方で、市販のコンソメスープで作るポトフはコンソメが旗を振って、野菜たちをまとめ上げてくれるようなポトフと言ったところだろうか。こちらは母の記憶を呼び覚ます懐かしい味として、いつでも食べたくなるポトフ。私にとってはどちらも大切なポトフなのだ。

煮込み料理が食べたくなる秋ごろから、ポトフにぴったりな野菜たちが旬を迎える。食欲の秋に、ポトフを作って楽しんでみてはどうだろうか。
優しくコトコト煮込まれる野菜たちは、美味しい料理となって台所を包んでくれる。その匂いはあなたを癒すだけでなく、家路を急ぐ「誰か」も幸せにしているかもしれない。

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庄本彩美

料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。

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