冷えのぼせは、手足や下半身が冷える一方で、顔や頭部が熱っぽい状態を指します。これは冷え症の一種であり、年齢に関係なく発生します。体内で熱が不足すると、手足の末端の温度を下げて頭部(脳)の温度を守ろうとします。この状態が続くと、体温を調節する自律神経の働きが乱れ、冷えとのぼせが同時に起こるようになります。温めるとのぼせが悪化し、冷やすと冷えが悪化する厄介な症状です。
中医学的に冷えのぼせは、主に身体の冷えに由来すると考えられています。①寒さによる血行不良、②ストレスによる気や血の巡りの停滞、③脾胃(胃腸)が弱ったことによる気血の生成不足、④腎の弱りによる陽気不足などが挙げられます。これらの不調が組み合わさり、冷えと熱が入り混じった冷えのぼせとなります。
冷えのぼせ自体は病気ではありませんが、放置すると不眠、イライラ、肩こり、めまい、頭痛などの様々な不調に発展する可能性があります。不快な症状が続くと精神的にも負担がかかるため、日常のケアで体質を健康に整え、まずは冷えない身体づくりを目指しましょう。
①寒さによる血行不良タイプ
- ヒーターが入っているところで冷えのぼせのが悪化する
- 手足に強い冷えを感じる
- しびれがある
- 月経痛がつよく、経血にレバー状の塊が交じる
- 頭痛や肩こりが慢性的にある
- 顔色が青っぽい(冷え)か透明感がなく暗い(血行不良)
- 皮膚のしみ・くすみが多い
- 舌や唇の色が暗い、紫っぽい、黒いしみがある
中医学では血は冷えると流れにくくなると考えます。で、流れにくいことで熱の放散が早まります。すると末端は冷えるようになります。一方、温かい血の流れが停滞することで、余分な熱がこもるようにもなります。血流が悪化したことによる冷えのぼせです。対策は、とにかく温めること。寒い冬場は症状が悪化しやすいので、上記症状が該当する方は積極的に温めましょう。
紅麹、黒砂糖、納豆、ザーサイ、玉ねぎ、パセリ、みょうが、サンザシ、もも、カタクチイワシ、たら、紅茶、甘酒、清酒、お酢、バラの花など
②ストレスで気血の巡りが悪化しているタイプ
- 怒りや思い悩むことが増えると冷えのぼせが悪化する
- 頭痛や肩こりを感じる
- イライラ、怒りっぽい、緊張しやすい、興奮しやすい
- 胸苦しさや喉の閉塞感を感じる
- 舌のヘリが赤い
中医学では、血は気に乗って運ばれ、気血は共に体を温めていると考えます。なので、気血の巡りが悪くなると、冷えやのぼせといった体温の不均等が生まれます。五臓の肝は、気血の巡りをコントロールすると同時に、ストレスに対するクッションの役割をしています。怒りや思い悩みといった精神的なストレスが加わると肝の働きが不調となり、気血の巡りが悪くなります。すると熱の偏在がおきて、冷えのぼせといった症状となります。ストレスで悪化する冷えのぼせには、まずストレス対策を行うことが重要です。
えんどう豆、からし菜、キャベツ、春菊、生姜、玉ねぎ、パクチー、らっきょう、すだち、パパイヤ、オレンジ、みかん、ゆず、マッシュルーム、赤ワイン、白ワイン、バラの花、ジャスミンの花、金木犀の花など。
③胃腸が弱り気血が足りない状態
疲れると冷えのぼせの症状が出てくる
- 疲労が取れない
- めまいや立ちくらみがある
- 顔色が白い
- 食欲不振、お腹が張る
- 軟便・下痢
- よく汗をかく
- よくカゼをひく
- 舌の色が淡い
元気のもとである気や熱を運んでいる血が足りなくなると局部的に冷えやすくなります。また胃腸が弱って消化不良をおこし不要物が停滞すると湿熱といって熱を生み出します。こうして胃腸がよわると冷えのぼせになるのです。湿熱は、脂っこい食事、味の濃いもの、辛いものなどのとりすぎや、お酒ののみすぎ、甘いお菓子の食べ過ぎで悪化します。不摂生をつづけると良くなりませんので、まずは食の改善を。
米、しょうが、シナモン、山椒の実、枸杞の実、ほうれん草、いんげん豆、鶏肉、卵、豆腐、ねぎ、フェンネル、なつめ、きのこ類、にんじん、かぼちゃ、鮭、黒糖 など。
④腎のよわり
- 強い足腰の冷え
- 頻尿、または夜間の頻尿
- むくみ
- 腰痛
- 腰のだるさ
- 性欲減退
- 耳鳴り
- めまい
- 聴力低下、難聴
- 物忘れ
- 舌の色が淡く白い
中医学で五臓の腎は、体を温めるストーブであり、体を潤すダムであるとされています。そのため、腎の機能が低下すると、体の寒熱のバランスが崩れて、冷えやすく、のぼせやすくなります。腎は加齢とともに弱るので、高齢者の冷えなどでよく見られる状態です。高齢と言っても、30代をすぎると腎は誰しもが弱るので、大人になったら腎を守る意識を持ちましょう。腎の養生では、腰回りを冷やさない、睡眠を十分に取るなどを積み重ねていくことが大切です。
なた豆、クリ、くるみ、にら、えび、なまこ、鹿肉、羊肉など
手足が冷たいのに顔は熱くほてる、冷えのぼせ。一般的に更年期の不調と混同されることがありますが、年齢にかかわらず現れます。たかが冷えのぼせと放置しておくと、大きな不調につながることもあるので、積極的に症状を改善しましょう。
櫻井大典
国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。
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