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ユズ

旬のもの 2023.12.26

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こんにちは。俳人の森乃おとです。

一年の終わりの12月、冬の寒さが厳しくなるにつれ、ユズ(柚子)やキンカン(金柑)、ダイダイ(橙)、ウンシュウミカン(温州蜜柑)などの柑橘類が旬を迎えます。その形も色も、まるで小さな太陽のよう。冬枯れの寂しい季節に実り、私たちをほっと癒してくれるミカンの仲間の中で、清涼な酸味と際立つ香りが愛されるユズを、ご紹介いたします。

ゆふ空から 柚子の一つを もらふ―種田山頭火(たねだ・さんとうか/1882~1940年)

ユズはミカン科ミカン属の常緑小高木です。中国の揚子江沿いの地域が原産とされ、日本には奈良時代までに伝わり、平安時代には全国で栽培されるようになりました。
樹高は4m ほど。5~6月に、葉のわきに径1~2㎝ほどの清楚な白い5弁花をつけます。
果期は9 ~12月で、果実は直径4~8 cmほど。果皮の表面には凹凸があり、独特の芳香があります。

元々の中国名は「柚(ゆ)」でしたが、酸っぱいことから日本において「柚酸(ゆのす)」という別名が生まれ、学名のjunos(ジューノス)の基になりました。今や、ユズの生産量・消費量とも日本が最大となり、現代の中国植物名は香橙(こうとう)といいます。
掲句は、“放浪の俳人”として知られる種田山頭火の自由律俳句。どこか寂しい夕べ、黄昏色に輝くユズの実は、思い出の日の夕焼け空からの賜りもののように思えたのでしょうか。
ちなみに俳句の世界では「柚子」は秋の季語です。

スダチもカボスもユズの仲間

ユズはレモンと並んで、酸味と香りを楽しむ「香酸柑橘類(こうさんかんきつるい)」の代表格です。
近縁種には大分県特産のカボスと、徳島県特産のスダチがあります。カボスとスダチは表面がすべすべしていて、果汁が多いのが特徴。カボスはユズよりやや小さく、スダチはさらに小さくなります。酸味の強さはスダチが一番。カボスとスダチは8~10月のまだ青い時期に出荷されます。

また、獅子柚子(ししゆず)と呼ばれる、ユズの10倍ぐらいの大きさの柑橘類もあります。果皮にしわがよって起伏がある外観がユズに似ていますが、ブンタン(文旦)の仲間。実が大きいことから「実入りがよくなる」「千客万来」の縁起物として、正月飾りにも使われます。

冬至(湯治)に柚子湯に入れば、融通が利いて万事うまくいく

一年で最も日照時間が短くなる冬至の日(2023年は12月22日)、カボチャや「ん」のつくものなどを食べて運気を上げ、ユズの実を丸ごと、あるいは輪切りにして浮かべた「冬至風呂」に入ることがよく知られています。
冬至の「柚子湯」は、端午の節句の「菖蒲(しょうぶ)湯」、夏の土用中の「桃(もも)湯」と並び、昔から親しまれている薬湯です。

「冬至」と「湯治」、「柚子」と「融通」をかけて、銭湯が普及した江戸時代から“冬至(湯治)に柚子湯に入れば、融通が利いて万事うまくいく”として、はじまったそうです。
柚子湯には血液の流れを良くする血行促進効果があり、この日柚子湯に入ると、一年中風邪をひかないといわれます。また、冷え性や神経痛、腰痛などを和らげる効果があり、果皮に含まれるクエン酸やビタミンCにより、ひび・あかぎれが改善されるのだとか。
美肌効果も抜群とされますので、冬至の日に限らず、楽しんでみてはいかがでしょうか。

柚子しぼる ちいさな鳥を 啼(な)かすように――澁谷道(しぶや・みち/1926年~2022年)

ユズの花言葉は「健康美」「恋のため息」「汚れなき人」です。
「健康美」は、栄養価の高い万能食材としてのユズにふさわしい花言葉。「恋のため息」はユズの強烈な酸っぱさから。また、「汚れなき人」は、ユズの白い小さな花のイメージに由来しています。

さて、女性医師にして俳人の澁谷道氏の「柚子しぼる――」は、なんとも味わい深い句です。
ユズは、味噌和えや酢の物など、お正月の料理でも欠かせない大切な食材の一つ。ユズの香りのもとは、果皮に含まれる「精油」の成分ですが、その爽やかな香りを最大限に引き出すには、まず半分に果実を切り、ついで皮を下に向けてきゅっと指で絞ることが重要です。
すると精油が損なわれることなく滴り落ち、小鳥の声のような透き通る香りがあふれます。それは、汚れなき新しい年のはじまりへの、ちいさな祝福なのかもしれません。

ユズ(柚子)

学名Citrus junos 
英名Yuzu
ミカン科ミカン属の落葉小高木。中国の揚子江流域が原産地。日本へは奈良時代以前に渡来。香りと酸味を楽しむ香酸柑橘類の代表格。樹高は4mほど。花期は5~6月。果期は9~12月。葉のわきに鋭いトゲを持つ。

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森乃おと

俳人
広島県福山市出身。野にある草花や歳時記をこよなく愛好する。好きな季節は、緑が育まれる青い梅雨。そして豊かに結実する秋。著書に『草の辞典』『七十二候のゆうるり歳時記手帖』。『絶滅生物図誌』では文章を担当。2020年3月に『たんぽぽの秘密』を刊行。(すべて雷鳥社刊)

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