3月になりました。野菜売り場を覗くと、春を告げる野菜が増えてきました。
今日のお話は、独特のほろ苦さがたまらない「菜花(ナバナ)」です。
菜花は、花、蕾、若い葉茎を食べるアブラナ科の総称で、現在ではセイヨウアブラナ系が多く、菜の花と呼ばれるものは在来種系です。
スーパーなどに並んでいる菜の花の価格は、菜花の倍以上します。それは、やわらかい穂先部分のみ均一の長さで揃っていること、鮮やかな緑色で蕾が閉じた状態であることが、見た目と味が良いとされているからです。
私がかつて働いていた大阪の市場に入荷していた菜の花は、手を近づけると春の息吹のような温もりを感じました。しかしその温もりから蒸れて傷んだり、花が咲いて味が落ちていきますので、すぐに発泡スチロールの蓋を開けたままにし、保冷剤を置いて冷却して品質を保っていました。
菜花に話を戻しますと、優しい価格で茎も食べれるのでボリュームがあり、家庭料理にぴったりですし、色々な菜花があるので面白いかもしれません。
例えば江戸時代から東京で栽培されている伝統野菜「のらぼう菜」や、白菜、野沢菜、仙台雪菜なども同じアブラナ科にあたります。これらの冬野菜は、春になると子孫を残すために花茎(董/とう)を伸ばし、花を咲かせます。花が咲く前に柔らかい部分を食すことを「とう立ち菜」といい、それぞれ、白菜の菜花、野沢菜の菜花、仙台雪菜の菜花とも呼ばれています。他に、小松菜やチンゲンサイもあります。
菜花は一冬を越しているので、やわらかく、優しい甘みが特徴的な野菜だといわれています。
元々「とう立ち菜」は、農家さんが自分で食べるために作っていたそうです。私は大分県の農家さんから白菜の菜花を仕入れておりましたが、地方の市場では地元の農家さんから仕入れることが多いです。
海外の菜花の種類では、中国では「紅菜苔(コウサイタイ)」、イタリアでは「Cima di rapa(チーマディラーパ)」があります。
紅菜苔は、茹でると少しぬめり感があり、苦味はなく食べやすい味です。
チーマディラーパは、蕾が日本の菜花より大きくなるのが特徴で、茹でたものをオリーブオイルとレモンの搾り汁と塩で味付けした料理やペペロンチーノなどがあります。
紅菜苔とチーマディラーパの種は日本でも販売しているので、栽培する農家さんも増え、道の駅や直売所で見かけるようになりました。
ご家庭で菜花を食べるときは、おひたし、天ぷら、汁物、炒め物などの料理がおすすめです。
冷蔵保存していて花が咲いてしまうことがありますが、捨てずに花を摘み取って、サラダ、お漬物、炒め物などの普段の料理に飾ってみてください。
蜂蜜と混ぜて、アイスクリームと旬の日向夏にかけてみました。黄色の小さな花が春の彩りを演出してくれますよ!
写真提供:川口屋薫 (1枚目の写真除く)
川口屋薫
料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁
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