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アオゲラ

旬のもの 2024.03.12

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こんにちは。科学ジャーナリストの柴田佳秀です。

私が子どもの頃、テレビではいろいろなアメリカのアニメーション番組が放送されていて、そのひとつにキツツキが主人公のアニメがありました。私はそれが大好きで、そんな影響からか、キツツキの実物をいつかは自分の目で見てみたいなあと思っていました。それから数年後、今回紹介するアオゲラを初めて見たときは、まさに本物のウッドペッカーだ!と大感激したことを覚えています。

そんな思い出の鳥であるアオゲラですが、大きさが30cmほどで、ハトよりも少し小さいくらいのキツツキです。この鳥の一番の推しポイントはなんといっても、日本にしかいない鳥であること。世界でも本州、四国、九州にだけ分布する固有種なのです。そのため、学名がPicus awokera(ピクス・アヲケラ)と、和名と同じですし、英名もJapanese Green Woodpecker(ジャパニーズ・グリーン・ウッドペッカー)と、日本の緑色のキツツキという意味の名前がつけられています。緑色なのにアオゲラという和名は、日本では緑を古くは青と呼んでいたことに因み、江戸時代中期には、この名前で呼ばれていたそうです。

素敵な鳥のアオゲラには、もう一つ推しポイントがあります。それは頭の赤い色。オスは額から後頭にかけてが赤く、メスは後頭だけがちょっと赤くなっていて、とてもよく目立ち、視界に入るとドキッとしてしまいます。それにしても補色関係の緑と赤の配色とは、自然はなんて優れたデザイナーなのでしょう。私は、この鳥を見るたびにその色彩設計に感心してしまうのです。

アオゲラが生息しているのは、森や林です。平地から低い山までのとくに広葉樹林を好みます。ノミのような鋭く尖った嘴で木をつついて穴を開け、長い舌を差し込んで中に潜む甲虫の幼虫やアリを食べています。近年、関東地方では、市街地の緑の豊かな公園で一年中みられ、繁殖もするようになりました。なかには、駅前の街路樹に巣を作った例もあり、だんだん身近な鳥となっているようです。今回の写真も、すべて都内の公園で撮ったものなんですよ。

食べ物を探るアオゲラ

アオゲラにとって、3月の今ごろは繁殖シーズンのスタートです。普通、多くの鳥のオスは、繁殖期になると求愛や縄張り宣言の意味がある“さえずり”と呼ばれる、その種独特の節回しの声で鳴きはじめます。ところがアオゲラには、このさえずりの声がないのです。そのかわりに、嘴で木を連続してつついて「ダラララララララ~」と聞こえる音を出しています。

これはドラミングといい、アオゲラはなんと1秒間に20回以上も木をつついて音を出すことができるんです。そんなに激しく木をつついて、脳しんとうを起こさないかと心配になりますが、キツツキ類の頭蓋骨はヘルメットのような構造になっており、直接脳に震動が伝わらないため、大丈夫なんだそうです。

さえずらないアオゲラですが、「ピョーピョー」と聞こえる大きな声を発することがあります。私は、指笛でこの声を真似ることができ、森の中で吹いてみると、すぐに「ケケケ」と鳴きながらアオゲラが飛んできます。なんだか意思疎通ができたようで、嬉しいのですが、じつはこれは誤解です。縄張りにライバルが侵入したと思って、追い出そうとして来たのであって、けっして仲良くしようとしているわけではありません。ですから、混乱をさせては申し訳ないので、あまり鳴き真似はやらないように控えています。

最後に、アオゲラには大きな謎があるんです。それは、私が住む千葉県にはこの鳥がいないことです。ごくごく稀には現れることはありますが、繁殖した記録がありません。お隣の茨城や東京にはいるのに、千葉県だけがアオゲラ空白地帯なのです。いったいどうして分布しないのか、その理由はよくわかりませんが、近所にこの鳥がいないのは、ちょっと寂しい感じ。軽快なドラミングを聞いてみたいなといつも思っています。

写真提供:柴田佳秀

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柴田佳秀

科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。

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