こんにちは。料理人の川口屋薫です。
今日のお話は「分葱(わけぎ)」です。

形は葱によく似ていますが、分葱は葱と玉葱が交ざってできた品種です。名前の由来は、鱗茎(りんけい)と呼ばれる球根から株分かれしながら育っていくことからきています。また、1つの球根から多くて50以上に分かれることから子孫繁栄を願う縁起物の野菜とされ、桃の節句では昔からお祝いの料理に使われてきました。
代表的な分葱料理に「分葱のぬた」があります。「ぬた」とは「沼田」のようなドロっとした感じに似ていることから付いたと言われています。
茹でた分葱に、白味噌、砂糖、酢、みりん、辛子を混ぜ合わせたもので合えた料理です。

私は、春になると旬のホタルイカやアサリを入れた分葱のぬたを作って副菜や酒の肴にします。
分葱を数十秒茹でて、ザルにあげて冷まします。形を揃え、根本から葉先に向かって包丁で軽くしごいて、中にあるヌメリを適度に取り除きます。少し手間がかかりますが、食味がよくなります。
3cm幅のやや長めに切ると、分葱の食感とともに優しい甘味と旨味をより引き出せます。
基本の合わせ調味料は、わけぎ2パックに対して、白味噌、三温糖、酢を各大さじ2、練り辛子小さじ1/2で作ります。合わせ調味料が少し余る分量になっていて、ディップ感覚で胡瓜、トマト、レタスなどにつけて食べるなどしています。
分葱の使い方は、他にも刻んで卵焼きや炒め物、チヂミに入れるなど色々な料理に使えます。また、 葱特有の辛味が苦手な方やお子さんにも、比較的食べやすいかと思いますので、味噌汁や麺類の薬味にされると良いです。

春に出回る分葱は、一度寒さにあたったことにより甘味と旨味が増しています。
ぜひ分葱を使った料理でその味わいを楽しんでみてください。
最後に、分葱の国内生産量60%を占める広島県尾道市島しょ部、沿岸部の話に少し触れたいと思います。
この地域では、排水性の良い砂地の土壌と年間降水量が少なく温暖な気候が分葱の栽培に適していて、明治時代頃から栽培が始まりました。代々自家採取した球根を育成しながら、収穫しています。

しかし、2018年6月に起こった西日本豪雨により分葱の生産地も大きな被害を受けました。当時私は市場で働いていたのですが、本格的に入荷が再開できたのは半年後でした。とても長く感じましたが、同時に分葱を通して生産地が再び活気付き、当たり前の尊さを学べたことがとても嬉しかったです。今もスーパーで見かけると、分葱に微笑んでしまいます。

川口屋薫
料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁
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