こんにちは。俳人の森乃おとです。
春爛漫の4月となり、園芸店の店先にはブーケや花束が並び、心弾む季節となりました。主役はバラやカーネーションなど華麗な花となりますが、その美しさをさらに引き立てるのは、「名脇役」といわれるカスミソウ(霞草)です。カスミソウは純白で清楚で奥ゆかしく、贈り物としても喜ばれ、とりわけ日本人に愛されている花といえるでしょう。
春の霞のように白く小さな花が群れ咲く
カスミソウはナデシコ科ジプソフィラ属の一年草あるいは多年草。原産地は日本ではなく、地中海沿岸地方からコーカサスなどの中央アジアで、約125種が分布します。
属名の学名「Gypsophila(ギプソフィラ)」は、古代ギリシャ語で「Gypsos」(ギプス=石膏)と「Philios」(愛する)」が語源。石灰質の土壌に好んで生えることに由来します。
日本に渡来したのは、明治~大正時代初期といわれます。和名は、分かれた枝先に白い小さな花がたくさん集まり、春霞のように見えることから名付けられました。
ムレナデシコ(群撫子)、コゴメナデシコ(小米撫子)、ハナイトナデシコ(花糸撫子)という別名もあります。
代表的な産地は熊本県と福島県
日本で栽培されているカスミソウには、大別して2つの種類が存在します。最もポピュラーなのは、一年草のエレガンス種(Gypsophila elegans)で、草丈は、20~50㎝。花色は白またはピンク。花期は5~7月です。
5弁花で、花径は1~1.5㎝。花軸の下から花茎が対生で分岐し、それを何度も繰り返すことによって、大きな花の集まり(花序)をつくります。分岐を繰り返してできるので、岐散(きさん)花序と呼ばれます
もう一種は、多年草の「G. paniculata(パニキュラータ)」。園芸店で切り花として売られているものの多くが、こちらのタイプとなります。「シュッコンカスミソウ(宿根霞草)」と呼ばれ、草丈は30~120㎝。花序も草丈につれて大きくなり、1本の茎に数千個の花がつくことも。個々の花はやや小さくなり、八重咲きの品種も増えます。
日本での代表的な産地は、熊本県と福島県の2県。カスミソウは暑さに弱く、冷涼な気候を好みます。そのため、主産地は、出荷時期によって夏・秋は福島県、冬・春は熊本県と変わります。
ちなみにカスミソウは、特有の匂いがあることで知られています。そのため産地では、匂いが軽減されるような処理が行われているそうです。
カスミソウは、どの花と組み合わせても、相手を包み込んで引き立て、それによって自らも美しく輝きます。セロファンで包まれたブーケや花束の中で、カスミソウはいかにも幸福そうに見えます。なんと健気で可憐な花なのでしょうか。
引き立て役としてばかりではなく、もちろんカスミソウは単体でも愛されており、特にドライフラワーの花材として人気があります。カスミソウは乾燥しやすい性質があり、逆さにして風通しの良い場所にハンキングしておくだけで、簡単にドライフラワーの出来上がり。
初心者にやさしい花ですので、この春はぜひドライフラワーにチャレンジしてみてください。壁に飾るスワッグに加えると、部屋がいっそう華やかになります。
花言葉は「清らかな心」「無邪気」「思えば慕われる」
カスミソウの花言葉は、「清らかな心」「無邪気」「親切」など。
英語名は「Baby’s breath」で、文字通りに訳すと「赤ちゃんの吐息」。「Baby」を可愛い人、愛しい人とも解釈することもできます。カスミソウの白く可憐な花を、赤ん坊や幼い子ども、あるいは恋人の吐息に例えたのでしょう。
欧米では、赤ん坊を出産した女性にカスミソウを贈るそうです。花言葉の「無邪気」はその習慣から生まれました。「清らかな心」は、カスミソウの清楚な雰囲気によるものです。
ところでカスミソウは7月7日、「七夕の日」の花ともされています。霞むような白い小花が天に散る星屑を思わせることに由来するのでしょう。「思えば慕われる」の花言葉は、七夕伝説の織姫と牽牛の恋から生まれました。
さびしい日にはカスミソウを部屋に飾ってみましょう。心の中にまで白く清らかな花がふんわりと広がり、憂いが慰められる思いがします。歌人・鳥海昭子が詠うように、カスミソウにふさわしく控えめで「それとなく」ではありますが、遠く遥かな希望が天の川の星のごとく、胸の奥でまたたきはじめるかもしれません。
カスミソウ(霞草)
学名Gypsophila elegans
英名Baby’s breath
ナデシコ科ギプソフィラ属の一年草または多年草。地中海沿岸地方からコーカサスなどのアジアに分布。草丈は20~120㎝。花色は白、ピンク。花径1~1.5㎝で5弁花。花期は5~7月。切り花として、他の花と組み合わせて使われることが多い。
森乃おと
俳人
広島県福山市出身。野にある草花や歳時記をこよなく愛好する。好きな季節は、緑が育まれる青い梅雨。そして豊かに結実する秋。著書に『草の辞典』『七十二候のゆうるり歳時記手帖』。『絶滅生物図誌』では文章を担当。2020年3月に『たんぽぽの秘密』を刊行。(すべて雷鳥社刊)
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