今日のお話は、春の山菜「野蒜(のびる)」です。

名前の由来は、川の土手や畑のあぜ道に自生しているため、野に生える蒜(ニンニクの古名)からきていると言われています。
野蒜は日本で古くから食べられていたことが、日本最古の書物である古事記(712年)応神天皇の歌の一節から伺えます。
野蒜は、にんにく、ねぎ、にら、たまねぎ、らっきょうと同じヒガンバナ科の野菜です。
にんにくの臭いほど強くなく、にらのような細長い葉と根元には鱗茎と呼ばれる部分が付いています。たまねぎのミニチュアのような形で、味はらっきょうやにんにくに似ていて少しぬめりを感じます。葉も鱗茎も余すことなく食べることができます。
また、うるいや行者にんにくのように生のまま食べることができるため、使いやすい山菜でもあります。
生のままですと味噌をつけたり、醤油漬けや甘酢漬けにします。他に野蒜の特徴である臭いや辛味を引き出すようなキムチにも合います。
加熱料理ですと、天ぷらやさっと茹でて酢味噌和えにします。

春になると野蒜を採りに行かれる読者の方々もいらっしゃるかと思います。
野蒜は北海道から沖縄まで日本各地に自生していますし、人間の手が加わる場所に繁殖するため人間が生活をする場所で見つけやすい特徴があります。

野蒜は5月〜6月頃に開花を迎えますが、時に花の一部は咲かず、代わりにむかごのような珠芽(しゅが)と呼ばれる球状のかたまりができて、ポロポロと土の上に落ちて新しい野蒜を繁殖させていきます。
そう考えると、人間が川の土手や畑のあぜ道の雑草を刈ることにより、野蒜の珠芽を自然に土の上に落とすことができるので効率よく子孫を残すことができるといえます。さらに食用部分の鱗茎が分球して繁殖することもあります。
野蒜は直売所や道の駅に並ぶことがありますが、一般的なスーパーなどのお店で手に入れるのは難しいかと思います。
料理人さん達が利用する百貨店の野菜売り場には流通している野蒜が時々並ぶことがあります。その野蒜のパックには平仮名で「のびる」と表記していて、初めて見たときは動詞みたいな名前だなぁとおかしなことを思ってしまいました。真っ直ぐに揃えられた葉と可愛らしい真っ白な鱗茎が丁寧に詰められていて、見ているだけで春を愛でているような気持ちにさせてくれました。
春は続きますので、野蒜を買える機会に恵まれますように。


川口屋薫
料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁
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