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認知症対策

旬のもの 2024.05.13

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「人の名前を思い出せないことが多くなった」
「やる気が起きない」
「同じ話を繰り返す」
「家事が面倒」
何気ないこういった小さな不調の中に認知症の前触れが隠れていることがあります。

厚生労働省の発表によると2025年には認知症患者が700万人に達すると言われており、これは65歳以上の方の5人に1人の割合です。もはや誰しもなりうる病気として考えるべき問題です。

西洋医学から見た認知症

認知症は、大きく分けて3つのタイプがあります。

①アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症(AD)は、脳内でβアミロイドたんぱく質が蓄積することで脳が萎縮してしまうことが原因の一つとされていますが、そのメカニズムは完全に解明されておらず、治療法も確立されていません。この疾患は、記憶障害や認知障害、判断力の低下といった特徴的な症状が現れます。

具体的には、時間や場所の感覚の喪失、人物の認識能力の低下などがあります。治療には、アセチルコリンを増やす薬が使われます。また、2021年6月にはアデュカヌマブという新薬が承認され、脳内の異常なたんぱく質を減少させる効果が報告されました。

②レビー小体認知症

レビー小体型認知症は、脳の神経細胞内に、異常なタンパク質であるレビー小体の蓄積による脳の萎縮が見られる疾患です。これが大脳に広がると、認知症状が現れます。

症状には、アルツハイマー型と同じような、記憶障害や物忘れなども見られますが、記憶中枢と情報処理を管轄する分野が萎縮するため、幻覚、幻聴、睡眠時の奇声などが特徴出来です。また、しばしばパーキンソン病に似た運動障害も見られます。治療には、アルツハイマー型認知症の薬や抗パーキンソン病薬が使われます。

③脳血管性認知症

脳血管性認知症(MID)は、脳梗塞や脳出血の後に現れる認知症です。脳の血流の悪化が脳細胞にダメージを与えることで発症すると考えられています。特定の細胞がダメージを負った一方で、周囲は正常であるため、部分的な物忘れや、物忘れがあっても判断力や理解力あるなどといったまだらな症状が見られます。

治療には、再発を予防するためのリハビリテーションや高血圧薬、脳血流改善薬が用いられます。

漢方から見た認知症

認知症を根本的に治す方法はまだ見つかっていませんが、漢方薬の中には認知症の症状を和らげるのに役立つものもあります。漢方では認知症の原因を次のように考えます。

①腎虚(じんきょ)

足腰が悪くなり、耳が遠くなり、おしっこが近くなり、髪が薄くなり、骨が弱り、思考力や記憶力が低下します。いわゆる老化と見られる症状と一致するこれらの症状は、漢方では、五臓の『腎』の弱りとして考えます。腎は体の奥深くに位置し、生命力の根源である『精』を蓄えていると考えます。この精が足りなくなることが、上記のような症状を生み出すきっかけになるわけです。

腎は脳との関連も深く、とくにアルツハイマー型のような、脳が萎縮してしまうタイプの認知症には、腎の衰え、腎虚が関わっていると考えます。漢方薬で腎虚には、六味地黄丸や八味地黄丸、参馬補腎丸といった補腎剤が適しています。

養生では、座り過ぎを避けて、足腰を適度に刺激しましょう。腎は骨を管轄していますので、かかとにある程度刺激が加わるような運動がおすすめです。靴は厚底よりも薄いものが良いでしょう。かかとを上げて背伸びのようにして下げる、かかと上げを、ちょっとの待ち時間なども活用して行うようにしましょう。

座りっぱなしの方にもおすすめです。腎は、実のもの、肉類などを積極的に摂ることで養われるので、黒豆、大豆、くるみやクコの実、うなぎ、スッポン、羊肉などを積極的に取り入れましょう。

②瘀血(おけつ)

瘀血とは、本来サラサラと流れ、体の隅々にまで行き渡っている血が、ドロドロとした状態になったり、血管が固くなったりすることによって流れが悪くなってしまった状態のこと。どんな人でも加齢とともにこの状態は多かれ少なかれ起きます。瘀血の状態になると、脳への血流量低下も逃れられません。すると、脳の細胞は正常に働けず、物忘れや記憶力の減退が見られるようになります。

特に脳血管性認知症は、脳の血流量の低下が影響していると考えられているので、予防には、冠元顆粒など、血を活き活きとめぐらせる、活血剤というジャンルの漢方薬が適しています。

養生では、座りすぎを避け、体を冷やすことを避けましょう。何時間も同じ姿勢でいることは血流を悪化させます。1時間に一回は立ち上がったり、肩や首のストレッチなどを行ったりしましょう。また漢方の考えでは、血は油のような性質を持っていると考えるため、冷やすとめぐりづらくなります。薄着や、冷たい飲食を避けて、湯船に浸かる習慣を。

③肝鬱気滞

過度な感情によって、脳の正常な活動を邪魔している状態。情緒や筋を管轄する五臓の肝。ここがダメージを受けると、イライラや暴言が目立ち、体がこわばって硬直します。お腹も動きにくくなり、肩があがり、激怒しやすくなります。五臓の肝は血によって栄養を補われており、その栄養は飲食物から生まれます。肝が元気であるためには、ストレスを発散することと、よい飲食をすることが肝腎です。

まず大前提として、ストレスは誰しも溜まるもの。そしてその溜まったストレスはある程度で解消しておかないと、最後は破裂した風船のように爆発し、元に戻せなくなります。なので、ストレスを無くすと考えるよりは、小さいガス抜きを繰り返すようにしましょう。

そのために普段の生活の中に楽しみを取り入れましょう。そのためになにか好きなことに没頭する時間を設けるのがおすすめです。個人的には、靴磨き。ブーツを育てて、きれいにしているその時間は他の事を忘れられますし、達成感もあります。

後は笑い。動画やテレビ番組などなんでもいいので1日1回笑えることがあるといいですね。皆さんなりの好きなことを見つけてみてください。あと、やはり、早寝は効果絶大なので、出来ていない人は今日から“10分早く寝る”をぜひ。漢方は四逆散など理気という働きを持ったものを使います。

④脾気虚

五臓の脾は、胃腸など消化系を指す言葉。脾は、飲食物からからだに必要なエネルギーや栄養、潤いを取り出しているほか、腎虚の項目に出てきた精を作り出す場所でもあります。脾気虚とは、胃腸がよわって体を元気に保てない状態です。

よく肉を沢山食べる方は高齢でも元気というのを目にしますが、中医学的に見るとあれは逆で、肉をちゃんと食べられる胃腸を保っていることが長寿や健康につながると考えます。なので、高齢になっても胃腸が元気であるように、今から日々胃腸ケアを欠かさないようにしてください。胃腸が嫌うものは、過剰な水分、冷たいもの、生モノ、脂っこいもの、味の濃いものなど。あっさり味で、あったかい食事を腹八分目にすることを意識して生活しましょう。

また、氷の入った飲み物や冷たい果物、アイスなどは胃腸の調子を悪くすると中医学では考えます。たまにはよいですが、毎日にならないよう注意しましょう。漢方では、六君子湯や香砂六君子湯、補中益気湯や参苓白朮散など、健脾作用のあるものを使います。

まとめ

認知症の予防は、日々の心がけと早期発見から始まります。最新の研究によれば、認知症の一歩手前である軽度認知障害(MCI)を早期に発見し、適切に対応することで、病の進行を防げる可能性が高まると考えられています。日々を活動的に過ごし、笑顔を忘れずにいることが脳に良い影響を与えます。

また、歩く速さを少し上げることも脳にとって良い刺激となります。また、認知症との向き合い方を学ぶことに加え、家族や友人の支えを感じることも大切です。そして認知症は家族にとっても大変なことです。時には専門家や漢方薬を活用することも、穏やかな介護に繋がります。どうぞ、お身体に気をつけて、毎日を明るくお過ごしください。

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櫻井大典

国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。

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