料理人の庄本彩美です。
そろそろおせちについて本格的に取りかかる時期となりました。今年も頑張って作る予定です。本日は「黒豆」についてのお話です。
「豆粒のような」という言葉は、小さいものを喩えるときによく使われるが、大豆の仲間である「黒豆」は、おせちでは大きな役割を担っている。
おせちには「三つ肴(みつさかな)」「祝い肴三種」と呼ばれ、これさえあればお正月が祝える料理がある。「三」という数字は完全を意味しており、全体を一つにまとめる働きをする。関東では黒豆・数の子・田作り、関西では黒豆・たたきごぼう・数の子とされており、どちらにも黒豆が入っている。
実際に作るとなると「なんだか難しそう」と思う人も多いかもしれない。
黒豆は水に浸して戻すのに半日はかかってしまう。朝に「今日の夕食に食べよう」と思っても、煮る時間もあるので、すぐには食べられない。
普段の食事で豆も取るようにしたいが、この工程と時間を考えると、事前に準備するのが苦手な私にとっては、豆類はなかなか手を出すことができないものだった。
そんな私が黒豆が好きになったのは、お弁当作りが仕事になってからだ。
メニュー作りの時は、味だけでなく食材の種類や食感、そして色味など全体のバランスを考えて食材を選ぶ。
豆類は他の食材と異なる食感や味を持ち、食べた時の満足感を深めてくれる。また黒豆の色はお弁当の見た目を引き締めてくれるので、とても重宝する。
調理方法も、実はシンプル。
黒豆をさっと洗って半日水に浸けて置いてから、砂糖を入れて煮るだけ。浸けておいた水のままから茹でるので、火にかける予定の鍋に入れて置くとよい。
重曹でアクを取ると、豆が柔らかくなると言われ、黒さを出すために鉄を入れると書かれているものも多いが、絶対に必要なものではない。
全体の料理時間は長く感じるが、家に居る時間さえあれば、ほとんど手が空く料理でもある。黒豆の甘さが苦手でも、自分で作ると、甘さの加減もできるのでオススメだ。
「一度作ると、沢山出来てしまうのでは?」と思うかもしれないが、黒豆煮は冷蔵庫で5日程度持つ上に、冷凍保存で2ヶ月は持つ。お弁当では、ちょっとした隙間も埋めてくれるし、食卓に豆皿で箸休めとして出してもいいだろう。
おせちにはそれぞれの品におめでたい意味や、いわれがあるが、黒豆には「黒くまめまめしく」といって、陽に焼けて忠実忠実(まめまめ)しく良く働くようにという意味があり、健康や長寿、魔除の意味などがこめられている。
本来は食べる私たちへの願掛けの意味だが、黒豆も「まめまめしく」働きもので、私たちの食卓を彩ってくれる存在なのである。
おせちの本には「この日にこれを作る」という細かいスケジュールが載っているものもあるが、まずは黒豆からスタートすることが多く、12月27・28日くらいから豆を浸ける。黒豆を炊き始めると、いよいよおせち作りが始まるのだ。
新しい年を迎えるために、ゆっくり黒豆を炊いてみるのはどうだろうか。
きっと黒豆は、陰ながらせっせと私たちの年末年始に寄り添ってくれるだろう。
庄本彩美
料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。
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