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雨降って地固まる

旬のもの 2024.06.07

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もうじき梅雨の季節がやってきます。

ジメジメするし、洗濯物は乾かないし、外出はできないしで気持ちも鬱々としがちになります。どんよりとした厚い雨雲に覆われるせいもあるのでしょうか。身体も重たくなるような気がします。

不快指数をすこしでも下げるために、そろそろ傘や長靴など雨具の準備、室内のカビ対策をせねばと思う今日この頃です。そうそう、梅雨といえばちょうど梅が熟す時期の雨という意味もありますので、梅の収穫や準備に勤しむのもいいですね。

そんな時期に決まって思い出す言葉があります。
今日のテーマ、「雨降って地固まる」です。

広辞苑にはこう記してありました。

” 変事があってかえって前よりよく基盤が固まることのたとえ。 “

もともとの言葉の由来は、雨が降ったあとの土の状態からきています。
雨が降ると足元がぬかるんで歩きにくくなり不便ですが、逆に降ったあとほど地面が雨を吸収して土が締まり、より固くなることがあります。
このように、一見悪いようなことでもかえって良い基盤ができ、良い方向へ進むことのたとえから「雨降って地固まる」ということわざは生まれたといいます。

似たような言葉に、「禍を転じて福と為す」や「怪我の功名」もありますが、これらに共通しているのはすべて「あとで分かる」ということです。当たり前ですが、渦中にいるときはなかなか気づけないもの。落ち込んだり苦しんだりしているときは、目の前のことばかりを見てしまうので、あとで色々なことが繋がりハッとすることがあります。

たとえば私は趣味で小さな畑をやって4年目になりますが、いまだにうまくいかないことばかりです。一生懸命草抜きをして、肥料や水をやっても報われないことが多くて、最近も今年一番たのしみにしていた玉ねぎが枯れてしまい、とても落ち込みました。
収穫しても収穫しても小さな玉ねぎで、まぁ食べられないことはないのですが、お世話になっている人にもプレゼントしたいと意気込んでいたのでガッカリ。

そんな私の様子を見ていた隣の畑のおじいさん、「かわいそうやな...」といいながら、収穫を手伝ってくれて、さらに黙々と私の畑の周りの雑草を刈ってくれたのです。

この時期はとくに雑草が生え放題で、ひとりでは手に負えない状況だったのですごくありがたかったのと、おじいさんの背中がなんだかとてもたくましくてかっこよく見えたのです。

そうしてあとで分かったことなのですが、実はおじいさんが畑で育てた玉ねぎも小さかった。
このときばかりは「下を向いてばかりいられない」と強く思いながら、私もせっせと次の作物用に玉ねぎの跡地を耕しました。

自然を相手にするからこそ得る学び。報われなくてもそのあとの行動が未来へ繋がっていくのだ、ということを私は畑を通して日々教えられているような気がします。

写真提供:高根恭子

この雨が止むころにはきっと、新しい道が開けている。
そう信じて、今年も梅雨があけるのをゆっくりと待ちましょうか。

〈参考文献〉

新村 出『広辞苑 第三版』 岩波書店(1983年)

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高根恭子

うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。

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