梅雨の時期になりました。
雨空の日が多くなり、家で過ごす時間も必然的に多くなりますね。

私は毎年この時期になるとせっせと家で「仕込み」をします。
梅酒や梅シロップをつくったり、お野菜を漬ける用に甘酢の素をつくったりしておきます。真夏になると食欲も落ちて、料理する意欲も下がりがちになるので、身体が動くいまのうちに保存食の準備をしておく。いつの間にか毎年の恒例行事となりました。
二十四節気も「芒種」を迎え、種をまく時期。
未来への仕込みをしておくというのは、理にかなっていることなのかもしれませんね。
しかしいくら家で充実した時間を過ごしていても、やはり外には出たくなるもの。
晴れますように、との願いを込めてもう一つの仕込み、「てるてる坊主」をつくってみるのはいかがでしょう。幼いころにティッシュや紙でつくった経験がある人も多いであろう、あのまん丸い人形です。

てるてる坊主は、漢字で書くと「照照坊主」。
晴天を祈って軒下などにかけておく人形で、平安時代に中国から伝わった風習だといわれています。
中国では、ほうきを持った女の子に似せてつくった紙人形が雨雲を払ってくれる、という言い伝えがありました。それが日本に伝わったとき、お坊さん(僧侶)の方が晴れの願いが叶いやすくなるイメージが強かったため白装束を着せた「坊主」になったそうです。
なるほど、あの愛らしいまん丸フォルムはお坊さんの姿なのですね。
そう考えると急に親近感が湧いてくるようです。

てるてる坊主は、江戸時代にはすでに白い布や紙でつくった人形を吊るす風習があったといわれています。当時は「照々法師(てりてりほうし)」「てり雛」「てるてる」など様々な呼び名があり、正式な祈祷行事だったころは、翌日晴天となれば瞳を書いて、神様に供えるお酒と一緒に川に流していたそうです。このため、「先に顔を書くと雨が降る」「雨が止んだら顔を書いて、ありがとうの気持ちを込めて処分する」という習わしが定着していったのだそうです。
ほかにも、「墨などにじむインクで書くと雨で濡れたときに泣いているような表情になるため雨をもたらす」ともいわれていたり、「逆さまに吊るしたり、白とは真逆の色を使ったりすると願いとは逆の効果になる」などの言い伝えがありますが、いずれも晴れへの願いから生まれた風習だと思うと、昔の人々の純真な心が伝わってくるようですね。

いまは明日の天気が簡単にわかるようになりましたが、それでも空を見上げて願う気持ちはいまも昔も変わらないことだと思います。
みなさんも、てるてる坊主とともに、明日の天気を願ってみませんか。
叶っても叶わなくても、祈りを込めた思い出はずっと残っていくことでしょう。
〈参考文献〉
新村 出『広辞苑 第三版』 岩波書店(1983年)

高根恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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