日に日に寒さが増して、布団が恋しい季節がやってきました。
朝、いつもの時間に目が覚めているのについつい長く布団にくるまってしまう。あとすこし、あとすこし...と思いながらしばらくモゾモゾした後に「よし!」と気合いを入れて起き上がる。
そうして私が最初にするルーティンは、白湯をつくることです。
しばらく家事をしながら白湯ができるのを待ち、ゆっくりとすする。
これがもう、たまらなくおいしいんですよ。
身体の隅々まであたたかさの余韻が広がって「ふうううう」と、心からの声が漏れます。
うつわ越しに両手もあたためながら至福のひとときを過ごします。
一度沸かしたお湯を冷まして作る白湯は、体を内側からあたためてくれるすぐれもの。冷え性の私にとっては薬のようなもので、普段は白湯のまま飲むことが多いのですが、さらに温まりたい時によく飲むのが、「葛湯(くずゆ)」です。
葛湯は、葛粉に砂糖を混ぜた飲み物。
ほのかに甘くて、とろーりとした舌触りが妙にリッチな気分にさせてくれます。
ゆず、生姜、シナモン、ココアなど味の種類も豊富にあるので、その日の気分に合わせて選びます。
葛粉の原料である「葛」は、日本全国に自生するマメ科の植物で、秋の七草のひとつです。
葉は湯がいて食し、花は乾燥して薬に、茎は繊維に、根は葛粉に...と捨てるところがないと昔から重宝されてきました。葛湯は、葛根に含まれるデンプンを精製してつくられています。夏の間に光合成をし、秋から冬にかけて根に蓄えられた養分たっぷりのデンプンを抽出しているのです。
しかし、その工程にはとっても手間暇がかかります。
掘り起こした葛根を砕き、水にさらしてデンプンを抽出。不純物を取り除く作業を何度も繰り返す「寒晒し」という工程を経て葛粉になりますが、大変な労力がかかるため葛根だけを使った「本葛」は生産量が少なく、貴重なもの。一般的に販売されている葛湯は、芋類を混ぜたものが多く出回っています。
私は葛の産地である奈良県に住んでいるので、葛湯を飲む機会が多いです。
老舗も多く本葛も手に入るので、葛湯はいつの間にか日常的な飲み物のひとつになりました。
とろみがあるので熱を逃さず、ゆっくり、ゆっくり飲める。だんだんと身体がポカポカしてきますし、風邪を引きそうな時に、薬代わりに飲むことも多くなりました。
とくにこれからの季節のおたのしみは、ストーブで沸かした鉄瓶の白湯で入れること。
これがまた格別なんです。ストーブの灯りを眺めながら、ホッと一息。たまに大きめのお椀に入れることもあるのですが、湯気が顔中を包み込んでくれるので、心もじんわりあたたかくなるような気がします。
今年も、葛湯とともに安らぐ時間を大切にしながら、年末の忙しなさを乗り越えたいなぁと思います。
高根恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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