春から初夏にかけては潮干狩りのシーズンですね。
春は大潮で潮が引く時間帯が昼間にあたるため、暖かい陽射しの下、干潟で潮干狩りを楽しむことができるのです。アサリもちょうど産卵期を前に身入りが良くなり、旬を迎えるタイミングでもあります。

春の訪れと潮干狩り
春に潮干狩りをする習慣は、江戸時代にもありました。春の訪れを感じるころ、潮が引いた浜辺には色とりどりの着物をまとった人々が集まり、潮干狩りに興じる光景が広がりました。
江戸時代後期の文献『東都歳事記』には、「深川洲崎の汐干」という潮干狩りの挿絵があり、広大な干潟に人々の姿を見ることができます。

江戸の町では、潮干狩りは庶民の間で楽しまれる春の風物詩。品川や深川など、各地に潮干狩りの名所がありましたから、家族や友人とともに、砂の中からアサリやハマグリを掘り出す人々の歓声が干潟に響いていたことでしょう。
波の音とともに、潮の香りが人々の鼻をくすぐる。こうした潮干狩りの風景は、江戸の人々にとって春の訪れを実感させるものでした。

潮干狩りとアサリの食文化
身近な干潟で採れる貝類は、手間をかけずにおいしく食べられる食材として江戸庶民の食卓に欠かせないものでした。
特に浅瀬に生息するアサリやシジミはたくさん採れ、棒手振りの商人が江戸の町中を売り歩いていました。安価で手に入れやすかったため、日々の貴重なタンパク源となっていたのでしょう。

アサリは、江戸の台所でさまざまな料理に姿を変えました。最も手軽なのは、味噌汁でしょう。味噌汁に加えるだけのシンプルさながら、アサリのうま味がしっかり染み出し、滋味深い味わいの春の一杯になります。
また、「深川めし」と呼ばれるアサリご飯も、江戸の庶民に親しまれた料理のひとつです。江戸時代の深川は漁師町であり、新鮮なアサリが豊富に手に入ったことから、アサリをご飯に炊き込んだり、味噌仕立てのアサリ汁をご飯にかけたりして食べられました。もともとは、忙しい漁師たちが手早く栄養を取るために考案したとされる料理で、今でも東京の郷土料理として受け継がれています。
春の陽気が心地よい毎日です。これからがハイシーズンの潮干狩り。干潟に入るのは苦手という方も、海辺で潮風を感じるだけでも気持ちが良いですから、普段とは違う、春ならではの行楽に出かけてみてくださいね。

清絢
食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。
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