こんにちは。和菓子文化研究家のせせなおこです。
苦手だと思っていたけれど、本物を食べると「コレってこんなにおいしいものだったの⁉︎今まで食べていたものはなんだったんだ…」と衝撃を受けた経験、みなさんにもきっとあると思います。
私の場合、まさにそれが今回の主役「落雁(らくがん)」です。落雁といえば、お盆を始め、お仏壇に供えるもの、というイメージがありますね。蓮の花や菊、フルーツなどモチーフはかわいいものの、なんでこんなに地味なのだろう、なぜこのお菓子をお供えするのだろう、と疑問に思っていました。
実際食べても、もさもさしているし、どこがおいしいのかさっぱりわからない…そんなわけで、落雁の魅力をまったく感じることなく大きくなりました。
そんな私を変えてくれたのは、8年ほど前の出来事。「和菓子が好きなら一緒に作ってみない?」と声をかけてくれたのは、お寺の知り合いの方。「昔から木型があって、いつも落雁をお願いしている近所のお店に習ってみようと思って。」ありがたいお声がけ、と思ったものの、作るものは苦手な落雁。でも、体験自体は楽しそうだし…そんな気持ちで出かけました。
迎えてくれたお店の方は80代の夫婦。おじいちゃんが職人さんで、「まぁ、真似して作ってみなさい。」と一言いうとザザザっと大きな袋から粉をすくい、慣れた手つきで粉を混ぜていきます。
「これを木型に押し込んで、こうしてこうしなさい。」木型に粉をググッと押し込み、反対にひっくり返してトントンと木型を叩くと、真っ白な落雁が木型から外れました。ふんわりと甘い香りが漂います。
簡単にやってのけるおじいちゃんの真似をしてみてもそう上手くはいきません。米粉と砂糖、水飴が混ざった粉は思っていたよりも重く、木型に入れるのも時間がかかり、押し込むのにもかなりの力が要ります。全体重をのせてグググっと力を押すと「うん、いいね。取り出してごらん。」とおじいちゃん。そばで見守ってくれていたのだな、と嬉しくなりました。
初めて自分で作った落雁はほんのりと温かく、食感もふわふわでもふもふ。今まで食べていた落雁はなんだったの?と衝撃を受けました。「あんこを入れて作ってもおいしいよ」と、おじいちゃんがお店のあんこを落雁の真ん中につめたものを渡してくれました。
作ってから数日後、「日にちが経つと水分が抜けて少し固くなるよ」といわれていたものの、今度はほろっとしたメレンゲのクッキーのような出来立てとはまた違う新感覚の食感の落雁と出会えました。
それ以来、苦手と思っているものもきっとまだ本物の味に出会えていないだけだ、と、どんな食べ物に対してもポジティブに捉えられるようになりました。ますます食への追求心は募るばかりです。

