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椎茸しいたけ

旬のもの 2025.10.30

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今回ご紹介するのは、日々の料理に大活躍の「椎茸」です。
椎茸は日本の山々に自生してきたため、古くから食用にされ、日本人にとって最も身近なキノコのひとつと言えるでしょう。現在では一年を通して手頃な価格で手に入りますが、自然の中に自生する天然の椎茸が採れるのは、春と秋の年2回だけです。

自然に近い環境で育つ原木椎茸。

森の香り、秋の恵み-椎茸

秋の山に入ると、湿気を含んだ落ち葉の匂いの奥に、土や木の香りが混ざり合っています。そして、湿った地面や朽ち木から顔を出すのは、いろいろな種類のキノコたち。その森の恵みのひとつが、椎茸です。

「椎の木に生える茸」という名前が示す通り、椎の木や楢、樫などの紅葉樹の枯れ木に発生します。現在、スーパーなどで見かける椎茸の多くは、菌床栽培または原木栽培によるもの。天然の椎茸はきわめて貴重です。

しかし、昭和初期の記録には、各地の山で秋になると椎茸が豊富に採れ、ところによっては、背負いかねるほど籠いっぱいに集まったという記述も見られます。こうした記述からは、日本人にとって、椎茸はまさに秋の深まりを告げる山の味覚だった様子が伝わってきます。

江戸時代の本草学者・毛利梅園(1798−1851)が描いた椎茸。(『梅園菌譜』(1836)国立国会図書館デジタルコレクションより)

椎茸栽培のあゆみ

山に自生する椎茸を、日本人がいつ頃から食べていたのかは定かではありませんが、特に山村では貴重な山の幸として珍重されてきました。そんな椎茸の人工栽培が始まったのは江戸時代初期のこと。豊後(大分県)や伊豆(静岡県)で栽培が始まったといわれており、当初は原木に鉈で切れ目を入れて、椎茸が発生しやすいよう手助けするところからスタートしたそうです。

その後、試行錯誤を繰り返す中で、栽培技術が確立されていき、江戸時代中期には、椎茸栽培を指導する「菌師」と呼ばれる人たちが、日本各地へ出向いて育て方のノウハウを伝えるように。その甲斐あってか、椎茸の人工栽培はどんどん広まっていき、椎茸栽培の専門書『温故斎五瑞篇』(1796)が刊行されるまでになりました。

そのような先人の努力があってこそ、私たちは一年中おいしい椎茸を食べられるようになったのですね。

乾燥させれば、うま味も栄養価もさらに高まる。

出汁にもなる、椎茸の強み

椎茸の魅力は、食べておいしいだけでなく、出汁にも使えることにあります。

椎茸に含まれるグアニル酸は、昆布のグルタミン酸、鰹節のイノシン酸と並ぶ、三大うま味成分のひとつ。乾燥させることで、うま味や香りが一層引き立ち、ビタミンDなどの栄養価もアップします。

こうした特徴のおかげで、和食の出汁文化とともに、椎茸の食文化も発展し、現在のように日本料理に欠かせない存在になりました。

椎茸の香りと食感を丸ごと味わえる焼き椎茸。

旬のおいしい椎茸の選び方

秋に旬を迎える椎茸は、昼夜の寒暖差によって肉厚に育ち、香りが一段と豊かになります。特に天然に近い環境で栽培される山間地の原木椎茸であれば、旬ならではの風味を感じられるでしょう。

おいしい椎茸を選ぶ際は、まず傘の裏側に注目しましょう。ひだが白く、傘が開きすぎず、全体に肉厚なものが上質です。生の椎茸を焼くときは、裏返してじっくり火を入れると、うま味を逃さずに、傘にたまった汁まで味わえます。

肉厚の椎茸を炭火で焼き、酢橘やカボスを絞っていただけば、口の中には秋の香りがふわりと広がります。深まる季節を感じながら、椎茸の滋味をゆっくり堪能してみてください。

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清絢

食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。

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