こんにちは。科学ジャーナリストの柴田佳秀です。
カサコソと落ち葉を踏みしめながら、森の小道を歩くのが楽しい季節になりました。11月の半ばといえば、秋の旅鳥たちが通り過ぎ、かわりに冬を越すための鳥たちが姿を見せはじめるころ。今回紹介するシロハラも、ちょうど今ごろから見られる鳥のひとつです。
シロハラは、全長25cmほどのツグミの仲間。全体的に褐色を基調とした落ち着いた色をしています。胸から腹にかけては褐色がかった淡いクリーム色で、「白腹」という名前ほど白くはありません。では、なぜ“シロハラ”なのか?
それは近い仲間のアカハラと比べればお腹が白っぽいから――おそらくそんな理由から名づけられたのではないかと私は思うのです。オスとメスで羽の色に違いはほとんどありませんが、オスの方が頭部がやや黒っぽく見えるため、注意して観察すると見分けられます。
これからの季節、本州以南の森を歩けば、シロハラに出会えるかもしれません。彼らは群れを作らず、いつも単独行動。丸一日歩いても出会うのは数羽ほどです。とはいえ、西日本や南西諸島では越冬する個体が多く、鹿児島の森を歩いたときには、「こんなにシロハラがいるのか!」と驚くほどの多さで、関東との生息密度の違いを実感しました。
渡ってきてしばらくはとても警戒心が強く、じっくりと姿を見ることはなかなかありません。森の中の小道を足音を立てずに慎重に歩いていても、たいていが「ツィーッ」と警戒の声を残して、飛び去る姿を見るばかり。地味な羽色のカモフラージュが見事に効いていて、先に見つけるのは至難の業です。
ところが12月の末になると様子が一変します。あれほど警戒心が強かったのに、人の近くでも平然と地面を歩き回るようになるのです。いったい、何があったのでしょうか。
その理由はどうやら食べものの変化にあるようです。日本に渡ってきたばかりのころ、シロハラはカキやクスノキなどの果実を好んで食べます。ところが秋の実りはどの鳥にも人気で、あっというまに食べ尽くされてしまう。するとシロハラは、果実中心の食事から昆虫やミミズなどの地上の生きものへとシフトし、落ち葉の積もる森の地面に降りて採食をはじめるのです。
地上で食べものを探すシロハラの動きは実に大胆。くちばしで落ち葉を勢いよく跳ね飛ばし、その下に潜むコガネムシの幼虫やミミズを探します。そのときに響く「ガサッ、ガサッ」という音は、静まりかえった冬の森では驚くほどよく通り、シロハラの存在を教えてくれます。そんなに大きな音をたてて大丈夫?と心配になるほどですが、夢中で落ち葉を跳ね飛ばす姿はなかなか楽しい光景で、ずっと見ていても飽きません。ときには数メートル先で無防備に採食している個体に出会うことがあり、そうした子はたいてい若鳥。まだ世の中の怖さを知らないのかもしれませんね。
シロハラが日本で過ごすのは4月中旬くらいまで。すっかり春になった雑木林の梢にとまり、「キョロンキョロン」と楽しげにさえずる姿を目にすることもあります。そして、いつのまにか姿が見えなくなり、北の繁殖地へと旅立っていくのです。
これからの季節、静かな森の中を聞き耳を立てながら歩いてみませんか。シロハラが豪快に落ち葉をガサガサさせている姿に出会えるかもしれません。お勧めです。
写真提供:柴田佳秀

柴田佳秀
科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。
