腸にいいと思ってやりがちな、意外な落とし穴
腸にいいことをしよう。
そう思って、ヨーグルトを食べたり、発酵食品を増やしたり、食物繊維を意識したり。とても良い心がけですし、方向としては間違っていません。
ただ、実際の相談では、
「ちゃんと腸活しているのに、なぜか調子が悪い」
「むしろ前よりお腹が張る、下痢や便秘を繰り返す」
という声も少なくありません。
実はそこに、腸にいいと思ってやりがちな落とし穴があります。
気をつけたい3つの落とし穴
まず一つ目は、とにかく足す腸活。
ヨーグルト、納豆、キムチ、甘酒、食物繊維サプリ。
体に良いものを重ねれば重ねるほど良くなる、と思っていないでしょうか。
腸も体の一部です。処理能力には限界があります。とくに胃腸が疲れているときに、発酵食品や食物繊維を一気に増やすと、消化しきれず、ガスや張り、下痢につながることがあります。
たとえば、痰湿(余分な水分や老廃物がたまりやすいタイプ)の人。
これは「むくみやすい、体が重い、舌に白くベタっとした苔がつきやすい人」です。こうしたタイプの人が「腸にいいから」と薬膳で「潤いを補う」とされるヨーグルトを毎日食べると、腸を整えるどころか、冷やして痰湿を増やしてしまうことがあります。
ヨーグルトそのものが悪いわけではありません。ただ、今の状態に合っていないだけ。中医学では、これは「入れる前に、さばく力が整っていない状態」と考えます。
二つ目の落とし穴は、水分のとりすぎ。腸のために水をたくさん飲もう、という話をよく聞きます。でも、のどが渇いていないのに、惰性で飲み続けていないでしょうか。
日々の漢方相談では、むくみ、軟便、下痢がある人ほど、「水分は足りているのに、うまく使えていない」ことが多い印象です。この状態でさらに水を足すと、腸は冷え、動きが鈍くなります。むくみ、下痢や軟便、下半身の冷えがある人は今一度、惰性で飲みすぎたり、一生懸命飲もうとしたりしていないかご確認ください。
三つ目は、食材のイメージだけで選んでしまうこと。
その代表例が、玄米です。
玄米は確かに食物繊維が豊富で、血糖値の安定にも役立つ食材です。
ただし、
・痩せている
・疲れやすい
・胃腸が弱い
・冷えやすい
といった虚証タイプ(必要なものが足りていないタイプ)の人にとっては、負担になることがあります。
「体にいいはずなのに、食べると疲れる」
それは気のせいではなく、一生懸命消化しようとして、胃腸が無理をしているサインです。
ストレスや緊張も腸の動きを悪くする
そして見落とされがちなのが、気滞の問題。
ストレスや緊張が強く、気が巡らず詰まっていると、腸そのものが「動けない状態」になります。
気滞が強い人は、お腹が張る、ガスがたまる、便秘と下痢を繰り返す。
これは腸内環境が悪いというより、腸が緊張して止まっている状態です。
このときに、「腸にいいから」とさらに食物繊維や発酵食品を足しても、動いていない腸では、うまく処理できません。
まとめ
腸活で本当に大切なのは、「何を食べるか」よりも、今の体が、それを受け取れる状態かどうか。
入れる前に、
・冷やしすぎていないか
・食べすぎていないか
・飲みすぎていないか
・緊張しっぱなしになっていないか
一度、立ち止まって見てみてください。
腸は、頑張らせる臓器ではなく、整えてあげる臓器です。
腸にいいことをしているのに不調なとき。
それは「足りない」のではなく、やりすぎているか、合っていないだけかもしれません。引き算の養生が、腸をいちばん楽にしてくれる。そんなことも、実はとても多いんです。

櫻井大典
国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。
