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シンプルな食事のすすめ

旬のもの 2026.03.09

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最近つくづく思います。結局、体を整えるいちばんの近道は「難しいことをすること」ではなく、「余計なことを減らすこと」なのではないかと。中医学を学べば学ぶほど、そう感じます。

体調を崩している方の食事内容をうかがうと、共通点があります。豪華すぎるわけでも、暴飲暴食というわけでもない。けれど、どこか“複雑”なのです。味が濃い、品数が多い、加工食品が多い、間食が頻回、常に何かが口に入っている。

一方で、元気な高齢の方や、回復が早い方の食事は驚くほどシンプルです。ごはん、味噌汁、焼き魚、青菜のおひたし、などなど。

中医学では「脾(ひ)」が消化吸収を担うと考えます。脾は“気”を作る工場のようなものです。この工場、実はとても繊細です。冷たいもの、脂っこいもの、甘すぎるもの、味の濃いもの。こうしたものが続くと、脾は疲れます。そして疲れた脾は、エネルギーである気を十分に作れなくなります。

気が足りないとどうなるか。疲れやすい、やる気が出ない、イライラする、むくむ、眠りが浅い。「年齢のせいかな」と言われる不調の多くは、実は脾の疲れから始まっていることが少なくありません。

いつもSNSなどの発信で繰り返しお伝えしているのは、“足す前に、引く”という考え方です。サプリを足す前に、高価な漢方を探す前に、まずは食事を整える。整えると言っても、難しいことをするわけではありません。一汁一菜を基本にする、よく噛む、食事中に大量の水分をとらない、冷たい飲み物を控える、腹八分にする、胃が空っぽの時間を作る。それだけで、脾はかなり楽になります。

最近は「スーパーフード」や「機能性食品」が世の中にあふれています。もちろん、それらを否定するつもりはありません。けれど、体は流行でできているわけではありません。体は、毎日の繰り返しでできています。派手な一食より、地味な百食が本当は有効だと、日々の相談を通して感じています。

これは古典にも通じる考えです。『黄帝内経』には、「正気存内、邪不可干」とあります。体の内側に正気があふれ整っていれば、外からの邪気(体の外にある病気を作り出す要因)は簡単には入りこんでこないと説きます。その正気を作るのが、日々の食事なんです。

豪華である必要はありません。映える必要もありません。温かいごはん、旬の野菜、ほどよい塩加減、適度な肉や魚、それで十分です。実際、体調が安定してくると、味覚が変わります。濃い味を求めなくなります。甘いものへの欲求が落ち着きます。それは我慢ではなく、体が整ってきたサインです。

シンプルな食事は地味です。けれど確実です。体は、静かな方法で変わります。忙しいときこそ、不安なときこそ、情報に振り回されそうなときこそ、ごはんと味噌汁に戻る。それが、いちばん確かな養生です。
特別なことをしなくていいので、まずは今日の一食を、少しだけシンプルに。そこから、体はちゃんと応えてくれます。それが中医養生の基本であり、僕がずっと発信し続けている理由でもあります。

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櫻井大典

国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。

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