朝晩の冷え込みが気になってくると、葉物野菜がおいしくなる季節です。
今ではすっかりおなじみとなった中国野菜、青梗菜(チンゲンサイ)もシーズンを迎えます。つややかな緑の葉と白い根元のコントラストが美しく、さっと炒めれば色鮮やかさが際立ちます。毎日の食卓に欠かせない野菜のひとつですが、その歴史をたどると、日本に根づいたのは意外にもごく最近のことです。
中国に根づく、日常の青菜
青梗菜は中国原産のアブラナ科の野菜で、白菜の仲間にあたります。白菜のようにしっかりとは結球せず、根元の白い軸と濃い緑の葉を持つのが特徴です。中国では古くから「小白菜」や「青菜」と呼ばれ、長江の南、江南地方を中心に広く食べられてきました。
中国の家庭では、青梗菜はごく日常的な青菜です。油との相性がよく、にんにくとともにさっと炒めた「清炒青菜」(青菜の炒め物)は代表的な家庭料理。そのほか、具沢山の八宝菜や、辛味のきいた担々麺の付け合わせなど、いろいろな中華料理に用いられています。
昭和に伝わった新しい野菜
日本に青梗菜が伝わったのは1970年代のことです。そのきっかけとなったのは、1972年の日中国交正常化。これを機に中国野菜の導入が進み、そのひとつとして青梗菜が紹介されました。当初は「体菜」や「パクチョイ」と呼ばれていましたが、1980年代には「青梗菜」の名が定着しました。
青梗菜は冷涼な気候を好みますが、比較的気温変化や高温にも強く、日本各地で栽培が広まりました。路地栽培に加え、ハウス栽培の技術が進んだことで一年を通して流通が可能になり、やがて私たちにとって身近な野菜になっていきました。現在では、葉物野菜の中でも安定した人気を誇っています。
炒めても、煮ても、やさしい味わい
青梗菜が家庭の食卓に本格的に広がったのは、1980年代のころです。中華丼や八宝菜、炒め物の具として紹介され、次第に煮びたしや味噌汁、鍋料理など、和食にも応用されるようになりました。ほうれん草よりアクが少なく、小松菜よりやわらかい。クセがなく子どもでも食べやすいことから、学校給食や離乳食にも使われるようになりました。
中国から伝わってまだ半世紀ほどの青梗菜ですが、今ではほうれん草や小松菜と並び、日本の食卓に欠かせない野菜となっています。異国の食材がその土地の気候や味覚に合わせて変化し、日常の料理に溶け込んでいく。その歩みは、現代日本の食文化の豊かさと受容力を物語っているようです。
冷え込みとともに甘みを増した青梗菜のやわらかな緑は、今日も私たちの食卓をみずみずしく彩ってくれていることでしょう。

清絢
食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。
