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熱中症を防ぐ

旬のもの 2026.07.16

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夏になると毎年つらい人へ。中医学で考える熱中症対策

夏になると、毎年のように話題になる熱中症。昔より暑くなった、というのももちろんありますが、それ以上に、体が暑さに耐えにくくなっている人が増えているようにも感じます。

冷房の効いた部屋と猛暑の屋外を行き来し、冷たい飲み物を一気に流し込み、夜更かしをして、睡眠不足のまま朝を迎える。さらに、ストレスや疲労で体力も落ちている。これでは体がうまく気温の変化についていけません。中医学では、夏は汗や消耗との付き合い方がとても重要になると考えます。

日本の夏は湿気との戦い

特に日本の夏は、ただ暑いだけでなく、湿気が強いのが厄介です。気温が高いだけなら汗で熱を逃がせますが、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、熱が体にこもりやすくなります。なんとなくだるい、頭がぼんやりする、食欲が落ちる、やる気が出ない、胃が重い、寝ても疲れが抜けない。こうした状態も、軽い熱中症の入り口のことがあります。

中医学では、夏の暑さによるダメージを「暑邪(しょじゃ)」、湿気による負担を「湿邪(しつじゃ)」と考えます。この二つが重なると、体はかなり消耗します。

夏は胃腸が弱りやすい

特に弱りやすいのが、胃腸です。中医学でいう脾は、消化吸収を担う働きがありますが、湿気がとても苦手で、冷たいものの摂りすぎでも弱ります。

夏になると、アイス、冷たいジュース、キンキンに冷えたビール、冷たい麺類などを食べる機会が増えますよね。暑い日に冷たいものがおいしいのは、よくわかります。僕も食べます。ただ、冷たいものを摂り続けると、胃腸が冷えて働きが落ち、水分代謝も悪くなります。すると、余分な水分が体にたまり、だるさやむくみ、食欲低下につながっていきます。

しかも、胃腸が弱ると、体力そのものも落ちます。汗をかいても回復できず、さらに暑さに弱くなる、という悪循環が始まります。

熱中症は水分不足だけではない

熱中症というと、水分不足だけが原因と思われがちですが、実際には、疲労、睡眠不足、胃腸虚弱、栄養不足、ストレスなど、いろいろな要因が重なって起きることが多いんです。

特に注意したいのが、暑さに慣れていない時期。梅雨明け直後や、急に暑くなった日ですね。体は少しずつ汗をかく練習をしながら、暑さへの適応力を上げていきます。ところが、冷房漬けで汗をほとんどかかない状態が続くと、この調節がうまく働かなくなることがあります。

汗をかく力を育てる

だから、適度に汗をかくことも大切です。とはいえ、この暑さのなか無理に動くのはおすすめしません。朝や夕方の涼しい時間に、軽く歩いてみてください。じんわり汗ばむ程度で十分です。汗をかく力は急には育ちませんから、少しずつ体を夏仕様に切り替えていきましょう。

水分補給のポイント

では、熱中症を防ぐには、何を意識すればいいのでしょうか。まず大切なのは、少しずつ水分を摂ることです。一気飲みはおすすめしません。大量の水を急に流し込んでも、体はちゃんと吸収できず、吸収できない水分はかえって負担になります。もたれ、むくみ、だるさの元です。点滴がポタポタ落ちるくらいのイメージで、ひと口ずつ補ってみてください。

理想は常温に近いものですが、暑い日に冷たいものが欲しくなる気持ちはよくわかります。難しければ、まずは氷をたっぷり入れたものや、冷蔵庫から出したてをガブガブ飲むのを避けるところから。冷たい飲み物を一気に流し込むと、胃腸の動きも吸収力も落ちてしまいます。

最近は、テレビなどでも水分補給の重要性が頻繁に取り上げられて、とにかくたくさん飲まないといけない、と思っている方も増えました。もちろん汗をかく季節に水分は大切です。ただ、必要な量は人によって違いますし、汗もかいていないのに無理に大量の水を飲み続けると、かえって胃腸を弱らせることがあります。

中医学では、胃腸は過剰な水分にも弱いと考えます。冷たい飲み物を何度も流し込むと、消化吸収の働きが落ち、水分代謝もうまくいかなくなる。その結果、だるさ、むくみ、食欲低下、頭重感などにつながることも少なくありません。実際、夏になると、水を飲んでいるのに体が重い、胃がちゃぽちゃぽする、食欲が落ちる、という方はかなり多いんです。

だから大切なのは、とにかく量を飲むことではなく、自分の汗の量や活動量、喉の渇きに合わせて適度に補うこと。「2L飲め」はわかりやすいですが、同時に沢山の弊害を生んでいます。それで不調になっている方が沢山ご相談にいらっしゃいます。何リットル、ではなく、自分に合わせる。これが見逃されがちなポイントなんですね。「たくさん飲む」ではなく、「少しずつ飲む」です。

汗を大量にかく日は、塩分も必要になります。ただ、塩分も摂りすぎれば負担になりますから、極端に偏らず、その日の汗の量や活動量に合わせてみてください。昔ながらの梅干しや味噌汁は、汗で失われやすいものを自然に補いやすく、理にかなっているんですよね。

睡眠不足は熱をこもらせる

さらに、夏は睡眠もとても重要です。夜更かしが続くと、体の回復力が落ち、熱をうまく処理できなくなります。寝苦しい夜が続く季節だからこそ、睡眠環境と睡眠時間の確保を意識してみてください。

中医学では、夜は陰を養う時間と考えます。陰というのは、体を潤し、冷まし、回復させる働きのこと。これが不足すると、熱がこもりやすくなり、のぼせ、ほてり、動悸、イライラ、不眠なども起こりやすくなります。

冷房との上手な付き合い方

暑いからといって、冷房を我慢しすぎる必要はありません。むしろ、無理に耐えるほうが危険です。ただ、冷やしすぎには気をつけてみてください。
冷房の風を直接浴び続けると、表面は冷えているのに体の中には熱がこもる、という妙な状態になることがあります。加えて、表面で冷えた血液が体の中に戻ってお腹を冷やし、消化力を落としてしまいます。首、肩、お腹、足首が冷えすぎないように、お出かけの際は薄い羽織りものを一枚持っておくと安心です。

夏の食事は胃腸を守ることが大切

食事は、まず胃腸を弱らせないこと。夏は、ついあっさりしたものばかりになりがちですが、それだけではエネルギー不足になります。そうめんだけ、アイスだけ、ジュースだけ。これでは、体力が持ちません。

おすすめは、消化に負担をかけにくく、適度に栄養が摂れるもの。たとえば味噌汁、スープ、お粥、雑炊、蒸し料理などです。薬膳的には、きゅうり、冬瓜、トマト、すいか、緑豆などは体の熱を冷ます働きがあるとされます。一方で、冷たいものばかりで胃腸が弱っている人には、生姜、ねぎ、紫蘇、みょうがなど、香りのある薬味を加えてみてください。

ただ、ここで大事なのは、自分の体調に合わせること。熱が強い人もいれば、冷えて弱っている人もいる。同じ夏でも、必要な養生は人によって違います。だからこそ、体の声をちゃんと聞くことが大切なんですね。だるい、眠い、食欲がない、頭が重い。これは、怠けではなく、体からのサインかもしれません。

夏は頑張りすぎない

夏は、頑張りすぎないことも養生です。無理に気合いで乗り切ろうとすると、あとから一気にガタッと来ることがあります。最近は、秋になっても疲れが抜けない人が本当に増えました。夏の消耗を引きずったまま、冬に入ってしまう。だから、夏をどう過ごすかは、その後の季節にも大きく影響します。

暑い日は、ちゃんと休む。眠る。涼しい場所に逃げる。食べる。汗をかいたら補う。当たり前のことなんですが、忙しいと、意外と忘れてしまうんですよね。昔の人は、夏は無理をしない季節だと知っていました。昼間は少し休み、風を通し、季節に逆らいすぎない。

現代は便利になりましたが、体そのものは昔と大きく変わっていません。だからこそ、自然のリズムを少し思い出してあげることが、熱中症を防ぐ大切な養生になるのではないでしょうか。

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櫻井大典

国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。

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櫻井大典|ゆるかんぽう