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万願寺とうがらし

旬のもの 2026.07.21

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こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は万願寺とうがらしのお話です。

社会人になりたての頃、先輩から「万願寺まつりに行かへん?とにかく面白いから」と誘われた。「万願寺あまとう」として知られるこの京野菜は、京都府舞鶴市の「万願寺」地区で生まれたもの。これを味わえるイベントだという。先輩の熱弁に興味を惹かれ、二つ返事でついて行くことにした。

会場は、真緑色のオリジナルTシャツをまとった人々と、万願寺とうがらしで溢れかえっていた。「流しそうめん」ならぬ「流し万願寺」に、「万願寺釣り」。本当に万願寺とうがらし尽くしだ。

積み上げた高さを競う「万願寺タワー選手権」では、老若男女が真剣な眼差しで万願寺を積み重ね、観衆の大声援で熱気に包まれていた。
私もTシャツを身にまとい、タワー作りに挑戦。机の上の万願寺たちは、ひとつとして同じ形がない。それぞれが自由気ままに曲がりくねっている。私はその個性を活かすべく、瞬時に形を見極めては慎重に重ねていった。結果は、隣の小学生に完敗。しかし、無我夢中で楽しむ自分に悔いなどなく、笑みがこぼれたのだった。

興奮冷めやらぬまま家に帰り、「万願寺つかみ取り」で掴み取った戦利品を早速料理することにした。袋から取り出すと、元気な緑色に、昼間の熱気がにじんでいるかのようだ。
少し切り込みを入れて、熱したフライパンへ。火を通すことで、深い緑色が鮮やかな色へ変化していく。焼き目がついて、しんなりとしたら、さっと醤油を垂らす。香ばしい香りが立ち上がれば完成。器に盛り、かつお節をまぶせば立派なご馳走だ。

箸で持つと、無骨な見た目からは想像できないほど、トロリとしなやか。ピーマンの仲間でありながら、皮は驚くほど薄くて柔らかい。噛めば優しい甘みがじゅわっと広がる。たまに顔を出すピリッとした刺激も、唐辛子の仲間ならではのチャームポイント。
「ピーマンでも、唐辛子でもない。君は唯一無二の存在だねぇ」と思わず声が漏れた。
先人たちが守り育ててきた誇りと、この美味しさを継いでいこうという情熱が、あのお祭りとこの万願寺とうがらしに込められているんだなぁ。私は一口ごとに、その緑のしあわせを噛み締めたのだった。

自信に満ちた顔で野菜コーナに並ぶ万願寺とうがらしを見つけると、あの愛に包まれたお祭りを思い出す。真緑に輝く万願寺とうがらしに、私はまた、清々しい気持ちで包丁を握りたくなるのだ。

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庄本彩美

料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。

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