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カボチャ

旬のもの 2026.10.16

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こんにちは。俳人の森乃おとです。

10月に入ると、街角にはオレンジ色のハロウィンの飾りが灯りはじめます。その主役であるカボチャ(南瓜)は、夏に実ってから冬まで静かに出番を待つ、気の長い野菜です。祭りの夜には愛嬌のある提灯となり、冬至の食卓では家族の無病息災を願う一皿にもなります。実りの秋から冬ごもりの季節まで、豊穣の象徴として暮らしに寄り添う存在です。

カンボジアから渡来した「カボチャ瓜」

カボチャは、ウリ科カボチャ属の蔓性一年草。原産地は北アメリカ南部から南アメリカにかけての一帯です。日本へは天文年間(1532〜1555年)、カンボジアに寄港したポルトガル船が豊後国(現在の大分県)に漂着し、大名の大友宗麟(おおとも・そうりん)に献上したのが始まりとされています。

カボチャの語源には諸説ありますが、「カンボジアの瓜」を意味する「カボチャ瓜」から、のちに「瓜」が落ちて「カボチャ」になったという説が有力です。
漢字表記は中国語の南瓜(ナングァ)に由来します。別名は「唐茄子(とうなす)」「南京(なんきん)」です。

日本に最初に伝わったのは、ねっとりとした食感の「ニホンカボチャ」です。甘みは控えめで水分が多く、煮崩れしにくいため、煮物や蒸し料理といった和食によく合います。
一方、甘みが強く調理しやすい「セイヨウカボチャ」は、江戸末期にアメリカから伝わりました。明治以降に北海道などで広まり、現在スーパーに並ぶホクホクしたカボチャの多くは、この西洋種の系統です。

一株に咲く、雄花と雌花

カボチャは、長く蔓を伸ばして育ちます。葉は互生し、表面と裏面には細かな毛があり、葉身20cm前後(大きいものでは30cmほど)の掌状から心臓形に広がります。
花期は6~8月。葉の腋から径10cmほどの鮮やかな黄色い花を咲かせ、花冠は5裂します。多くの花は朝に咲き、午後にはしおれてしまう一日花。雄花と雌花が別々に咲く雌雄異花(しゆういか)で、ひとつの株に両方の花をつけます。

雄花は雄しべだけを持ち、雌花は花の根元がふっくらと丸みを帯びているのが特徴。これが受粉すると、そのままカボチャの実へと育っていきます。実が熟すのは夏から秋にかけて。分厚い皮に守られているため保存性が高く、収穫後しばらく置いて甘みを増してから食べるのが、おいしく味わうコツとされています。

ジャック・オー・ランタンとペポカボチャ

10月31日のハロウィンといえば、笑った顔をくり抜いたカボチャの灯り、「ジャック・オー・ランタン」を思い浮かべる方も多いでしょう。
ハロウィンはもともと、古代ケルト人が秋の収穫を祝い、死者の魂を迎えた祭り「サウィン祭」に由来するとされます。

野菜をくり抜いて灯りをともす風習自体は、実はカボチャではなくカブから始まったものです。悪魔をだました末に地獄からも天国からも締め出され、闇の中に取り残されたジャックという男の魂が、ランタンを手にさまよっているという言い伝えにちなむのだとか。
この風習がアメリカへ渡った際、カブより大きくて彫りやすいカボチャに置き換わり、今の橙(だいだい)色の提灯になりました。

英語では、この丸く色鮮やかな品種を「パンプキン(pumpkin)」と呼び、それ以外のカボチャは「スクワッシュ(squash)」と呼ぶのが一般的。パンプキンの語源は、「大きなメロン」を意味するギリシャ語「ペポン(pepon)」といわれています。
ハロウィンで彫られるパンプキンは、多くがペポカボチャ(Cucurbita pepo)の仲間で、ニホンカボチャやセイヨウカボチャとは別の種です。

花言葉は「広大」

カボチャの花言葉は「広大」。大きな葉を広げ、地を這うようにどこまでも蔓を伸ばしていく、その生命力にちなむのでしょう。
日本では冬至にカボチャを食べる風習もありますが、これは太陽の力が再び満ちてくる「一陽来復」の日に、保存のきく栄養豊富な野菜で無病息災を願ったものといわれます。果肉の鮮やかな黄色は、体内でビタミンAに変わるβ-カロテンによるもの。ビタミンCやE、食物繊維も豊富に含み、青物の少ない冬の食卓で、体を内側から守る頼もしい存在です。

ハロウィンの 南瓜の笑ふ 口に闇――小田島渚(おだしま・なぎさ/1973年~)

宮城県生まれの現代俳人の一句。ハロウィンのカボチャは、くり抜かれて「笑う顔」になります。灯りがともれば笑顔は浮かび上がり、同時に、その内側の闇もまた濃くなります。祝祭の明るさの中、笑うカボチャの口の闇は、単なる空洞ではなく、あの世とこの世の境目が最も近づく夜の入口のようにも思えてきます。

カボチャ(南瓜)

学名:Cucurbita spp.(ニホンカボチャ C. moschata/セイヨウカボチャ C. maxima/ペポカボチャ C. pepo)
英名:pumpkin/squash

ウリ科カボチャ属の蔓性一年草。北アメリカ南部から南アメリカにかけての一帯が原産。日本へは16世紀に渡来。花期は6~8月、葉の腋に径10cmほどの黄色い花を咲かせる。雌雄異花で、ひとつの株に雄花と雌花をつける。果期は夏から秋。分厚い果皮に守られ、保存性が高い。果肉はβ-カロテンやビタミンC・Eを多く含む緑黄色野菜。

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森乃おと

俳人
広島県福山市出身。野にある草花や歳時記をこよなく愛好する。好きな季節は、緑が育まれる青い梅雨。そして豊かに結実する秋。著書に『草の辞典』『七十二候のゆうるり歳時記手帖』。『絶滅生物図誌』では文章を担当。2020年3月に『たんぽぽの秘密』を刊行。(すべて雷鳥社刊)

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