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堀川ごぼう

旬のもの 2026.11.05

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こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は「堀川ごぼう」についてのお話です。

ある年、おせちを作るために、京野菜を取り扱っている八百屋の友人から初めて堀川ごぼうを仕入れた。その姿を目の当たりにしたときは、思わず声が出てしまった。「これはどう見たって、木の棒じゃないか!」
一般的なごぼうのイメージを遥かに超えたその太さは、まるで小さな丸太のよう。直径は5〜6センチほど。一本でどれだけのたたきごぼうが作れるのだろうかとワクワクしてしまった。

せわしない年末の厨房、湯気が立ち込める中で、まな板の上にゴロリと堀川ごぼうを横たわらせる。今まで見てきたごぼうが可愛く見えるほど、本当に存在感がある。太い一本に包丁を入れ、適度な長さに切り分けていく。「これがうわさの堀川ごぼうの空洞!」。

「ごぼうの中に穴が空いているけど、驚かないでね」と笑ってごぼうを渡してくれた友人の顔が思い浮かぶ。一瞬、中がスカスカなのだろうかと疑ってしまうほどだが、これが堀川ごぼうならではの個性であり、美味しさの秘密が詰まった空間なのだという。

堀川ごぼうは、通常の野菜のように種をまいてそのまま収穫するのではなく、1年以上という長い時間をかけて育てられる。その途中で、一度畑から掘り上げて、別の場所に横向きに植え直す「二度植え」という特殊な手間が加えられるそうだ。この過程や、限られた期間の中で急激に太く肥大していくダイナミックな成長のスピードに、中心部の組織の成長が追いつかなくなる。そうして自然と中心に空洞が生まれるのだという。つまり、この空洞は、大切にふくふくと育てられ、圧倒的な太さまで成長した証でもあるのだ。

沸騰したお湯に少量の酢を入れ、下茹でを済ませたら、いよいよ叩きごぼうの仕込みだ。すりこ木を手にとり、繊維に沿ってやさしく、かつ意識してごぼうを叩いていく。コン、コン、と台所に響く小気味よい音。一般的なごぼうと違って中に空洞がある分崩れやすいので、余計な力はいらない。まるで肩叩きをされているかのような心地よさに、叩く手が自然と優しくなる。

ふわりと土の温もりを含んだ芳醇なごぼうの香りが立ち上がり、手でさくと、ふっくらとした身がホロリと美しくほどけていく。これはこのままでもなんとも美味しそうだ。ひとつ口に運んでみる。
「こんなに太いのなら、硬いのではないか」という最初の不安はどこへやら、驚くほど柔らかい。見た目とは裏腹に、その身にはたっぷりと水分を含んでいる。噛みしめるほどにじゅわっと広がる豊かな旨みは、大地の力強さと冬の滋味が詰まっているかのようだった。この柔らかさなら、調味料をしっかりと吸い込んでいく準備もバッチリだ。
決して量産できるものではなく、生産者さんの途方もない情熱と手仕事の結晶だと思うと、手にとるだけで背筋が伸びるようなありがたさを感じるごぼうだ。

ちなみに、堀川ごぼうはその空洞に具材を詰める「射込み(いこみ)」も有名だ。海老のすり身や鶏のひき肉などをたっぷりと詰め、出汁でじっくりと炊き上げる。空洞があるからこそ具材がきれいに収まり、お互いの旨みが引き合うのだという。少し手間はかかるけれど、このごぼうならではの料理。こちらも次は挑戦してみたいなと、堀川ごぼうを目の前にして胸がふくらむのだった。

なかなかお目にかかれない特別なご馳走、堀川ごぼう。また出合えた冬にはぜひ手に取りたい。手間をかけて育まれた旬の恵みを、冬の台所の楽しみとして大切に味わいたいものだ。

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庄本彩美

料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。

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