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花明かり

季語 2024.03.31

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日に日に暖かくなり、木々の芽吹きを感じる季節になりましたね。
桜のつぼみも膨らんできて、今か今かと花ひらくことを待ち望む人も多いと思います。

桜はちょうど季節の変わり目、イベント事が多い時期に咲くので、とりわけ日本人にとって特別な花のひとつです。淡いピンク色の花々は、春のおとずれを祝福するかのような華やかさで私たちを楽しませてくれます。さらに散り際までうつくしくて、日本人の心を象徴する花として古くから親しまれてきました。

さて、桜といえば「お花見」ですね。
レジャーシートを敷いてワイワイと盛りあがったり、公園や河原など近くの名所へ見に行ったり、自宅に飾ったり...。ひとくちにお花見といっても千差万別です。
夜に桜をたのしむ「花明かり」もまた、味わい深いお花見なのでご紹介したいと思います。

花明かりは、春の季語。
桜の花が満開で、夜でもあたりがほのかに明るく感じられる様子をいいます。

最近は夜桜のライトアップが行われているところも多いようですが、花明かりは人工的ではない、月明かりの下に佇む天然のライトのようなもの。暗くてもぼんやりとわかる景色の変化を言葉にしたことを思うと、昔の人の繊細な感性にため息が漏れてしまいます。

花明かりと聞いて、数年前のお花見を思い出し、スマホの写真フォルダを探したらこんな写真が見つかりました。奈良県奈良市の佐保川で撮影したものです。

写真提供:高根恭子

当時は、仕事が忙しくて昼間にお花見ができませんでした。でも、どうしても満開の桜をみたくて、夜に無理矢理時間をつくって出かけたときに撮影した写真です。心のブレからか、この日はぼんやりした写真が多かったのですが、とくにお気に入りなのはこの2枚の写真でした。

写真提供:高根恭子

夜の佐保川は街灯がポツリポツリとあるだけで、ライトアップも小規模。人もまばらでした。そのせいか月あかりが際立って、桜がよりきれいに見えた思い出があります。

しかしこれらの桜を見上げながら、複雑な気持ちが湧いてきたのも事実でした。
いいことばかりじゃなくて大変なことも続いていた時期だったので、桜の迫ってくるようなうつくしさに、自分の器の小ささを感じました。桜は、昼でも夜でもこんなに堂々と咲きながらあっけなく散っていく。しかし、飽きもせずに毎年、毎年、同じ時期に同じ場所で咲く。たくさんの行き交う人を喜ばせている。見返りは求めず、ただただ咲く。
それなのに私は...と、おそらくこの写真を撮りながら悶々としていたのだろうと思います。

いまとなっては過去の話ですが、それから夜桜を見るたびに当時のことを感慨深く思い出します。いつもとは違うシチュエーションだったからこそ、向き合えた時間だったのかもしれませんね。

みなさんもぜひ、夜桜を見にいってみてください。
きっとやさしいお月さまと、満開の「花明かり」が、あなたの足元を照らしてくれることでしょう。

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高根恭子

うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。

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