こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
今年の冬は驚くほど暖かい日も多いですが、まだまだ身に染みる寒さの日が思い出したように続くことがあり、服選びにも油断ができないこの頃です。
冬から春にかけては「三寒四温」とも言われるように、寒い日と暖かい日を行ったり来たり、何度も繰り返しながら少しずつ季節が移り変わっていきます。
今回ご紹介する言葉は「薄氷」と書いて「うすらい」と読む、美しい響きの季語。
もちろん、そのまま「はくひょう」や「うすごおり」と読むこともあるのですが、「うすらい」の読み方は群を抜いて雅な雰囲気を持っているように思います。
季節は、早春。
言葉の意味は、早春の頃に水たまりや池などに薄く張った氷、また冬に厚く張っていた氷が徐々に溶けて薄く残っている状態のこと。
皆さんも、バケツに張られた水の表面が朝晩の冷え込みで凍っている様子や、小さな池の表面がところどころ凍りついている様子など、身近な場所で薄氷を見かけたことがあるのではないでしょうか。
薄氷はまさに、季節の移り変わりによって生まれる「儚くも美しきもの」であり、自然の世界から生まれた一瞬の芸術作品とも言えます。
冬の氷は、堅く閉ざされた世界をイメージさせますが、春先の氷は日の光に当たってキラキラと輝き、春を前にした明るい希望を予感させてくれるようにも思えます。
そういえば、「薄氷(はくひょう)を踏む」というと、「危険でひやひやするようなことに臨む」といった言い回しにもなりますが、たしかに薄く張った氷は儚く繊細。
ちょっと触れただけでもひびが入り、暖かさですぐに消えてなくなってしまいます。
でも、ともすると人の心も同じようなものかもしれません。
自分自身の心も、他の人の心も、美しくも脆く繊細なものだからこそ、そっと丁寧に扱わねばなりません。
壊れやすいものだからこそ、乱暴に扱って割ってしまうことのないように。やさしい暖かさでそっと溶かしていけば、キラキラと美しく輝くのです。
春は、出会いと別れの季節。たくさんの重要な節目が訪れ、環境や人間関係についても変化の多い季節でもあります。
そんな時、私たちの心の無垢な部分は、いつも以上に薄氷のごとく繊細になっているのではないでしょうか。
未知への期待と変化への恐怖が入り混じった、複雑な心境はまるで「薄氷」。
そんな心のひとつひとつが、そっと春の暖かさで丁寧に溶かされ、やがて希望でいっぱいの日々が訪れますように。

紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
