こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
毎年10月17日は、日本の神社の中心的存在である伊勢神宮において「神嘗祭(かんなめさい)」という神事が行われる日。
その年に収穫された新穀(穀物、特にお米)を、誰よりも先に日本の氏神様である「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」様に捧げ、神様からいただいた恵みに感謝するお祭りです。
日本の神話では、太陽を象徴する天照大御神様が地上に稲を授けて、この国に稲作が栄えるようになったと伝えられています。
私たちの日常生活ではあまり意識されることの少ない日かもしれませんが、神宮では年間1500回ものお祭りがある中で、この「神嘗祭」が最も古い由緒を持ち重要な祭祀とされています。
かつてはこの日も祝日だったのですが、現在は「新嘗祭(にいなめさい)」が行われる11月23日の「勤労感謝の日」のみが国民の祝日と定められています。
「神嘗祭」と「新嘗祭」の違いとして、「神嘗祭」はまず天照大御神様に新穀を捧げるお祭りで、「新嘗祭」はすべての神々に向けて五穀豊穣を感謝すると共に、天皇陛下もその新米を神様と一緒に召しあがるのが特徴です。
明治時代に改暦が行われる前までは9月に行われていたのですが、現在は10月15日から17日にかけてさまざまな儀式が続きます。
中でも重要なのが外宮・内宮ともに夕と朝に2度行われる「由貴大御饌(ゆきのおおみけ)」の儀。「大御饌(おおみけ)」とは「立派なお食事」という意味を指し、これがまさしく神様がお食事をなさる時間なのです。
神宮は天照大御神様のお食事を司る神様・食物神豊受大神(とようけのおおかみ)が鎮座する「外宮(げくう=豊受大神宮)」と、天照大御神様が鎮座する「内宮(ないくう=皇大神宮)」からなり、行われるお祭りは「外宮先祭」と言って先に「外宮」から斎行されます。
宮中でも天皇陛下が自ら皇居内の神殿で神宮を遥拝し、収穫の感謝と共に国家の隆昌・皇室の繁栄・国民の安寧などの祈りを捧げておられます。
神嘗祭では、天皇陛下が皇居にある御田でお育てになられた稲穂が奉られ、さらに全国各地の農家から奉納された「懸力(かけちから)」と呼ばれる稲束も供えられます。
この光景は、天皇陛下を中心とし全国各地の国民が一体となる、日本の姿を象徴しているようにも思えますね。
神道の文化が抱く感性の中でもとても大切なのは、自然という神々の前には、人が必ず謙虚であることなのではないでしょうか。
私たちが生きる上で、受け取っているすべての「恵み」は、決して人の力だけで得られるものではありません。
生きることに繋がるすべてに「感謝」を忘れない心を、神道の文化は教えてくれている気がします。
今年、新米を始めさまざまな秋の恵みを口にするとき、ふとそのことを思い出していただけたらと思います。
きっと、口にする「恵み」がよりありがたく、美味しいものに感じられるはずですよ。
紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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