こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
皆様は、ご自分の家の「家紋」をご存知でしょうか。
家紋というのは、いわゆる自分のご先祖様・家に伝わる紋章であり、企業におけるロゴマークのようなもの。言葉や文字を使わなくとも、その家紋ひとつでその「家」を示すことのできる、トレードマークとも言えるでしょう。
日本では独自の文化として発展してきた家紋ですが、これは主に家系・家柄・血統・地位など、自らの出自を表現するために用いられてきました。
天皇や皇族の菊花紋をはじめ、公家や武家の間で盛んに活用され、やがては庶民の間にも広まっていった文化です。

昔は誰もが文字を読み書きできるわけではなかったので、そういった意味でも図柄や文様によってひと目で素性がわかる家紋は、誰にとってもありがたく便利な存在だったに違いありません。
家紋の種類は数え切れないほど多く、同じ苗字であっても違う家紋を使っていることがあったり、反対に違う苗字であっても同じ家紋を使っていたり、というケースもあるのだそう。
今でこそ「家紋」を日常的に意識することも減り、ご先祖様が眠るお墓の墓石に刻まれているものを見てなるほどと思ったり、結婚式などで「紋付き袴」を着ることになって自分の家の家紋について調べてみたり、という方も少なくないのではないでしょうか。

そういえば、かの有名なテレビドラマ『水戸黄門』でも、終盤に繰り広げられる大立ち回りの後には、必ず「この紋所が目に入らぬか!」という名台詞とともに、徳川家の家紋(三つ葉葵)が記された印籠が登場しますね。
たったひとつの家紋を掲げることによって、たちまち黄門さまの身分が明かされ、皆が慄きその場にひれ伏すシーンは印象的です。


日本の時代劇などを見ていると、かつては今よりも、先祖代々続いてきた「お家(いえ)」というものが大切にされていたことがうかがえます。
たとえば、戦国武将はよく自身の家紋を旗頭に掲げて戦っていますし、誰が跡継ぎになるかという問題で家の存続が左右される話も珍しくありません。

このように、現代を生きる私たちの感覚以上に、かつては多くの日本人は「家」を背負って生きてきたのでしょう。
家紋の中にはきっと、それぞれの家とご先祖様が人生をかけて繋いできた、さまざまな想いや生き様が隠されているに違いありません。
今はもう、そのひとつひとつのドラマを知ることができなくとも、家紋を見ながらご先祖様はどのように時代を生きてきたのかを、想像してみることはできるかもしれません。

どんな家系に生まれたとしても、私は私個人である、ということは変わらない事実です。しかし、誰一人として欠けることなく、自分の代まで続くご先祖様がいてくれたからこそ今を生きることができているのも、また揺るがない事実。
私たちは、脈々と続いてきた「血」の生き証人でもあるわけです。家紋を目にしたときには、ぜひその長い歴史に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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