こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
神社におけるお祭りは、やはりお神輿の渡御(とぎょ=おでまし)があると、格段に気持ちが盛り上がるのではないでしょうか。神輿は「しんよ」とも読み、神様の霊魂が一時的に鎮まられる輿(こし)、すなわち、乗り物のことを言います。
神様の御霊(みたま)は、基本的に神社にある御神体を依り代として、ひっそりとお鎮まりになられています。
そのため、お神輿も普段は神社や地区の倉庫などに大切にしまわれていたり、飾られていたりすることも多いことでしょう。
しかし、年に一度の例大祭(その神社で行われる最も大きなお祭り)などでは、神様の御霊を一時的にお神輿に移してお乗りいただき、それを多くの人が担いで人里を練り歩く文化があります。
お祭りと聞くと、なんとなく「楽しい行事」や「賑やかなイベント」、また「季節の風物詩」といったイメージかもしれません。今でこそ巫女である私も、幼い頃はその深い意味を知らないまま、お祭りの日に神社に足を運んでは、非日常的な雰囲気をワクワクしながら楽しんでいたものでした。
しかし、お神輿の姿が象徴しているように、お祭りの主役となるのはあくまでも神様。お祭りの本来の趣旨も、私たち人間が、神様への「祈り」と「感謝」の気持ちを届けることにあります。
神社から出発したお神輿は、人々の賑やかな掛け声や祭囃子と共に、ゆっくりとしたスピードで町や村を練り歩くものが多いですよね。そのため、お神輿は地域ごとに複数用意されていることも少なくありません。日頃からその土地を守り豊かな恵みを授けてくださる氏神様(うじがみさま)を、そこに住まう氏子(うじこ)たちが大切に心を込めて担いでいるのです。
その理由を改めて考えてみると、私たちにとって特別な存在である神様が、もっとも人の暮らしの近くにいらしてくださるまたとない機会を、無意識のうちにじっくりと味わっているような気がしてなりません。
お神輿を激しく揺さぶりながら歩く訳も、中にいらっしゃる神様の御霊のお力を高める意味があり、地域の災難や穢れを取り除く祈りが込められていると言われています。
お神輿の巡行は、その担ぎ手はもちろん、渡御を見守る人々の顔も自然に笑顔があふれてくるような、とても幸せな時間ですよね。
神様と人が楽しく交流を行う、かけがえのないひととき。その際に欠かすことのできない存在こそが、何を隠そうお神輿なのです。
皆様がお住まいの地域や、ゆかりのある土地には、どんな神社がありますか?そして、その神社のお祭りでは、どんなお神輿を見ることができるでしょうか。
色・形・大きさも多種多様ですが、各地域における伝統や独自の掛け声・風習が反映されていたり、「男神輿」「女神輿」「子ども神輿」といった担ぎ手ごとのお神輿も誕生したりするなど、長い歴史の中で多くの姿が脈々と受け継がれているのも面白いものです。
ぜひ、日頃お世話になっている神様の大切な乗り物であるお神輿について、じっくり調べてみてはいかがでしょうか。
紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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