おはようございます、こんにちは。ライターの藤田です。
季節が春から夏に移り変わるこの時期、散歩をしていると潤い豊かな緑や、咲き誇る花々に目を奪われます。
あまりの眩しさに息を呑み、私たちよりもずっと昔、いにしえの人も同じように情趣を感じていたのかもと思いを馳せてみたり。
先人の息遣いを感じられるもののひとつに、今日のテーマである「百人一首」が挙げられます。
百人一首は、一般的に「小倉百人一首」として知られています。これは、約800年前、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・藤原定家によってまとめられました。
天智天皇にはじまり順徳天皇までの約550年という長い歴史のなか、『古今集』や『新古今集』『勅撰和歌集』から優れた歌人・100人の和歌を年代順に選んだ、いわば藤原定家による「ベストセレクト歌集」のことです。
ちなみに、「小倉百人一首」の小倉は、京都嵯峨の小倉山に由来します。藤原定家が、武将であり歌人でもあった宇都宮頼綱に依頼を受け、京の別荘(小倉山荘)にある襖色紙に歌を書き写したことでこのように呼ばれるようになりました。
襖に美しい和歌が描かれるなんて、それくらい当時の人々にとって和歌は親しまれていた存在だったのでしょう。
注目したいのが、その内容です。
百人一首のうち、恋の和歌が四十三首。季節の歌では秋の和歌が一番多く選ばれていて、女流歌人は二十一人が選出されています。
いまごろの季節の歌を探したところ、百人一首で夏について詠まれたものは一番少なく、たった4首のみでした(意外!)。
カラッと晴れた日に、思い出すのがこちらの歌です。広く知られる歌なので、どこかで目にした方も多いかもしれません。
「春が過ぎて、夏がやって来たみたいです。夏になると白い衣を干すという、天の香具山に真っ白い衣が干されているから」
緑に映える、白い衣のコントラストが美しいですね。
実は「小倉百人一首」のほかにも、武士による和歌を選んだ「武家百人一首」や、女性だけの歌を集めた「女百人一首」、「民用小倉百人一首」などもあり、元禄時代頃から一般庶民の間にも広がっていきました。
ちなみに、一般社団法人全日本かるた協会が定めた規則に則って行う「競技かるた」は、瞬発力、記憶力、精神力を兼ね備えたもので、スポーツとして取り組まれています。
「畳の上の格闘技」と呼ばれることもあり、その過酷さから、なんと、1日で体重が3㎏減る方もいるというので驚きです。
季節感や、奥ゆかしさ、遥か昔からいまなお響いてくる鮮やかな感動に、触れてみてはいかがでしょうか。時代が変われども、胸を打つ普遍的な何かが、今を生きる私たちに大切なものを思い出させてくれる気がします。
藤田華子
ライター・編集者
那須出身、東京在住。一年を通して「◯◯日和」を満喫することに幸せを感じますが、とくに服が軽い夏は気分がいいです。ふだんは本と将棋、銭湯と生き物を愛する編集者。ベリーダンサーのときは別の名です。
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