大学の代替医療の授業の時、教授が「長生きしたいなら息をしろ」と言っていたことを今でも覚えています。「息なんてみんなしているだろ」と思っていたら教授が「人間、物事に集中しているとうっかり呼吸をすることを忘れている時がある。呼吸が止まっていると、細胞に栄養や酸素が届きません。一つ一つは短い時間でも、それが一生となると、かなりの長さになるから、意識して息をするように」と続けました。
私たち人間が生きていくには、とにかく酸素が必要です。人は食事なら30日、水分なら3日摂らなくても生きられますが、呼吸が3分できないと命が危うくなることは想像に難くないでしょう。
日常生活で呼吸は無意識に行われていますが、上半身だけを使った胸式呼吸や浅い呼吸を続けていると、酸素不足による体調の変化が現れることがあります。私たちの肺の中には体内の代謝によって生成された二酸化炭素が、外部の空気よりもかなり濃く含まれています。十分な酸素を体内に取り込むためには、まず深く息を吸い込む前に、肺の中に蓄積した古い空気や有害な物質を吐き出すことが大切です。
鼻呼吸の重要性
正しい呼吸方法は、口ではなく鼻を使います。鼻呼吸で肺に送り込まれる空気は、適度な温度と湿度に調整され、効率的なガス交換が行われます。一方、口呼吸では効果的なガス交換が行われず、細菌やホコリが直接侵入しやすく、病気のリスクが高まります。鼻の粘膜や鼻毛はフィルターのような働きをしているので、良い鼻呼吸をするためには、良い鼻の状態を保って置かなければいけません。
正しく鼻呼吸ができていますか?
鼻呼吸では、吸気と呼気のときに異なる経路を通ります。吸気時には、鼻腔の上部を通り、脳の熱をとって頭をクリアにします。実際、脳は冷やすとその機能が向上しますが、過熱するとイライラや不安、不眠、パニックなどの症状が現れることがあります。鼻呼吸はこのプロセスに役立ちます。
呼気時には、鼻腔の下部を通ります。鼻から呼気を排出すると、湿気を体内に保持しながら空気を排出できます。一方、口から呼気を排出すると、湿気が逃げて口が乾燥しやすくなります。口の乾燥は喉も乾燥させ防御力を低下させるので、感染症にかかりやすくなります。
深呼吸を行う際も、鼻から吸い、鼻からゆっくり吐く方法が良いと思います。なぜなら、口の役割は咀嚼など別の機能があるため、呼吸には鼻が適しているからです。深呼吸を行うときは、鼻からゆっくり吐くことから始めてみてください。
大きないびきをかいたり、寝ている間に口が開いていたり、朝起きたときに口が渇いている場合は注意が必要です。呼吸の不調は酸素不足を呼び、酸素不足はさまざまな症状と結びつきます。酸素が不足すると、末梢の血流が悪化し、痛みやしびれなどの症状が出やすくなります。
また、内臓の働きも弱まってしまいます。呼吸は自分の意思でコントロールできる自律神経の働きの一部でもあります。たった5分間の深呼吸だけで、心身をどれだけ癒すことができるかを理解すれば、これを実践しない理由はほとんどありません。
深呼吸のメリット
エネルギーの流れをスムーズに
中医学では「気」が体内を巡るエネルギーと考えられています。ストレスがかかると、このエネルギーの流れが滞ってしまい、胸やお腹がはったり、情緒が不安定になったりします。深呼吸をすることで、気の流れが整い、体調や心の状態が改善されます。
リラックス
深呼吸はストレス対策の強力な手段です。緊張した時に深呼吸を行うと、体のこわばりがとれ、心が落ち着き、感情のコントロールがしやすくなります。興奮した自律神経を整え、リラックス効果をもたらします。
体内の浄化
深呼吸は体に新鮮な酸素を供給し、老廃物を排出するのを助けます。これにより、体の内部、とくに肺がきれいになりスッキリします。
病気への抵抗力の向上
ストレスが高まると免疫機能が低下し、体調が不調になりがちです。深呼吸による免疫システムの活性化は、この問題を緩和し、ストレスや病気に対抗する体の強さを高めます。
内臓の働き向上
長期間のストレスは、胃や腸などの内臓に影響を及ぼすことがあります。深呼吸は酸素を内臓に供給し、ストレスによる内臓不調を和らげるのに役立ちます。
中医学が考える呼吸の重要性
呼吸は、空気中の新鮮な空気である「清気」を吸い込んで、体内の不要な気である「濁気」を排出するプロセスです。吸気は新鮮な空気を体内に取り込む行動であり、呼気は体内の不要な気を外に排出する行動です。現代医学では呼吸は主に肺によって行われるとされていますが、中医学では、肺と腎が協力して行うと考えられています。腎が行う「納気作用」は、空気中の新鮮な気を取り込むことで、肺の中を清浄に保つ機能を指します。肺は呼気を、腎は吸気を主に担当します。
腎の「納気作用」は、生まれつき持っている「先天の気」によって行われます。先天の気が不足している場合、幼児期に喘息の症状が現れることがあります。また、加齢に伴い「精気」を貯める腎が弱ると、高齢者で気管支喘息が発症する可能性があります。どちらの場合も、息を吸いにくくなる症状は、腎の気を納める能力が低下している結果です。
生きていくためには、生まれつき持っている「先天の気」と後から補充する「後天の気」が結びついて、私たちを元気に保つ力を生み出します。
「先天の気」は、両親から受け継いだエネルギー、つまり生まれつきの体質です。しかし、この「先天の気」を「後天の気」で補充することで、体を良い状態に保つことができます。ですから、自分の体質を諦める必要はありません。後天の気を補充することでより良い状態に保てます。
「後天の気」は、食事や空気から取り込むことができます。大気から吸い込んだ気は「清気」と呼ばれ、これが食事から得る水穀の気と結びついて、「後天の気」が生まれます。そして、この「後天の気」と「先天の気」が結びついて、私たちの元気となる「精気」を生み出すのです。
理想的な習慣は、毎日少なくとも2回、朝起きたときと夜寝る前に行うことです。これにより、自律神経のバランスが整い、一日をスタートできます。また、寝る前にも行うことで、質の高い睡眠を得る手助けになります。特に朝は、窓を開けて新鮮な空気を吸い込むことが重要です。ただし、寒い空気は肺の負担になるので、ご注意を。
櫻井大典
国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。
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