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ずいき祭

暦とならわし 2024.10.01

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こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。

秋口に入ると、各地では神社におけるお祭りが、それぞれに盛り上がりを見せはじめます。
秋の祭礼の名目や目的の多くは、古来、大切に受け継がれてきた、神々に対して五穀豊穣の感謝を届けるもの。
春から大切に育ててきた作物が、さまざまな自然(神々)の目には見えない力や働きによって、今年も豊かな実りをつけたことに対して、「今年もこのような実りがありました、感謝いたします」と、一番にお供えをする意味が込められています。

京都(特に京都市上京区・中京区の一帯)で行われる北野天満宮の「瑞饋(ずいき)祭」も、そんな秋ならではの祭典のひとつ。
「ずいき」とは里芋や蓮芋の葉柄のことを言い、お神輿にそれらを中心とした秋の野菜・穀物・草花などを飾り付けて実際に京都の町をにぎやかに巡行するという、珍しい光景が特徴です。

10月1日から5日までの五日間にわたって、西ノ京の北野天満宮御旅所(おたびしょ=祭礼で本社から出たお神輿が仮にとどまる所)から、北野天満宮までを巡り、人々の暮らす街を活気づかせてくれます。

一般的なお神輿はほとんどが金色の飾りなどで彩られていますが、このずいき神輿は色とりどりの野菜や果物を中心に、毎年手作りで「西ノ京瑞饋神輿保存会」の方々を中心とした街の人々の手によってに作成され、飾り付けられます。
ずいき神輿の準備期間だけでも約一ヶ月にも及ぶとのことで、できあがっていく飾り付けには人々の技術と手間、そしてお祭りに対する想いが、きっと針と糸で一緒に縫い付けられているに違いありません。
出来上がったそのお神輿の、なんと可愛らしいことか!

お供えされる作物が「お神輿」の形になったのは、約四百年も前のことと言われています。
そこから現代に至るまで、飾り付けは年々工夫を凝らされ少しずつ変化しながら、たくさんの人々によって受け継がれてきたのでしょう。

北野天満宮の「天満宮」といえば、もともとはいわれなき罪で太宰府に左遷され無念の中生涯を閉じた菅原道真公の御霊を鎮めるために、お祀りされたことが始まりとされています。
しかし、その生涯における多数の功績からは学業成就・武芸上達・厄除けなど多数の御神徳が受け継がれ、全国各地に名高く広がっている神社です。

そして京都の北野天満宮では、農耕の神としても崇められた天神さまに秋の収穫物をお供えする「ずいき祭」が受け継がれ、その実りに人々は繰り返し感謝を捧げてきたのですね。
手間暇かけて作った作物をただお供えするだけでなく、もっとも美しい形で彩って神様に捧げようという想いが、私は、作物はもとより神様への深い敬意を感じてなりません。

ずいき神輿につけられた飾り付けは、ひとつひとつに愛情がこもっており、すべての角度からじっくりと眺めていたいものばかり。
皆様ももしこのお祭りを間近で見ることができるなら、その愛らしいお神輿の姿を、ぜひ目に焼き付けてみてください。
今年も素敵な「ずいき神輿」が、多くの人の目に触れることを心から願っています。

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紺野うみ

巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。

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