年の瀬も押し迫り、寒さも厳しくなってきました。日が暮れるのもほんとに早いですね。二十四節気のひとつにも数えられる冬至は、夜が最も長く、太陽の出ている昼の時間が一年で最も短くなる日のことをいいます。令和6年は12月21日で、期間としては21日〜翌年の1月4日までを指します。
冬至を迎えると、暦の上では冬の真ん中にあたりますが、季節はここからが本格的な冬。厳しい寒さや冷え込みがやってきます。
日本では古来、生活のリズムを刻む大切な節目として、多くの文化や習慣が伝わってきました。

最も昼が短い日ということを天文学的に説明すると「太陽が最も低い位置を通る日」といえます。それは一方で、「明日からは再び日が長くなる新たな始まり」とも捉えられます。冬至を境に太陽は再び力を取り戻し、太陽の南中高度は高くなり、昼の時間も少しずつ長くなっていきます。そのため、冬至を再生や希望の象徴として捉え、春の息吹を待つように「一陽来復」と表現されるのです。このような自然の営みに寄り添いながら、日本人は冬至を特別な日として祝ってきました。
こうした季節感を表す祭事が行われている場所もあります。東京都新宿区にある穴八幡宮に隣接する放生寺では、冬至祭が催され、「一陽来復」と記したお守りが授与されています。

冬至の伝統でよく知られているのは「かぼちゃ」でしょう。中風除けや風邪除けになるといって、無病息災を願い、煮物にして食べる風習があります。
日本で冬至にかぼちゃを食べる習慣の背景には、冬の保存食としての特性と栄養価の高さも関係しています。かぼちゃは、夏から秋にかけて収穫されますが、保存が効くので冬でもおいしく食べられる数少ない野菜の一つです。また、かぼちゃはビタミンAやカロテンを豊富に含み、風邪予防や体力維持に役立つとされていました。寒さが厳しくなる冬至に栄養を補給する目的で、かぼちゃを食べるのは理に適っていると言ってよいでしょう。
ただ、この風習はそれほど古いものではないよう。江戸時代後期の『諸国風俗問状』の回答を見てみると、冬至の行事食として、豆腐や小豆粥、餅などが挙げられていますが、かぼちゃは出てきません。『東都歳事記』(1838)には、冬至の柚子湯について記されているものの、かぼちゃについてはありません。
ですが、明治時代の『東京年中行事』には、冬至には柚子湯に入って南瓜を食べる風習が行われており、あちこちに南瓜売りがいると記されていますので、これは幕末から明治にかけて、東京で広まった風習のように考えられます。
いつの頃からか、冬至に「ん」のつく食べものを食べると「運」を呼び込むなどと言って、さらに縁起を担ぎ、「南瓜(かぼちゃの別名)」を食べる風習が全国的に広まっていったようです。

前述のように、もうひとつ冬至に欠かせない風習が「柚子湯」です。
江戸にはたくさんの銭湯があり、「冬至」と「湯治」の語呂合わせから、町のお風呂屋さんが、冬至に柚子湯に入る催し湯をはじめたのがきっかけで広まったとされています。
柚子は夏から青柚子を収穫でき、秋から冬にはよく熟した黄色い柚子が出回ります。焼き魚や鍋物など、さまざまな和食の香りづけや調味料として使われてきました。その芳香はとても爽やかで、柚子を湯船に浮かべれば、浴室いっぱいに心地よい香りが広がります。血行促進や疲労回復にも役立つとされ、柚子湯に入ると、冬の寒さに負けない活力が身体の芯から湧いてくるようですよね。

ところで、なぜ柚子なのでしょう?
これは冬至と同じく、「柚子」と「融通」の駄洒落とする説が有力です。「柚子湯に浸かって融通が利く」というわけです。湯治といい、柚子といい、江戸時代のお風呂屋さんのアイデアが生んだ風習と言っても良いかもしれませんね。
冬至の伝統には、寒い冬に備えるために保存食を活用し栄養を補給する知恵、柚子湯で体と心を癒す工夫、そして新たな一年への希望を込めた祈りが詰まっています。現代を生きるわたしたちも、日々の中で忘れがちな四季のリズムを思い出し、忙しない年末を乗り越えたいですね。

清絢
食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。
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