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夏越しの祓と水無月なごしのはらえとみなづき

暦とならわし 2025.06.30

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早いもので、今年も残すところ半年です。

区切りの日にあたる6月30日、日本各地の神社では「夏越しの祓(なごしのはらえ)」「夏越大祓(なごしのおおはらえ)」などと呼ばれる、身の穢れや厄を祓う行事が行われます。夏越しの祓といえば、神社の境内や参道に据え置かれた大きな「茅の輪(ちのわ)」がよく知られています。

茅の輪をくぐって厄を祓い、安寧を願います。

残りの半年も健やかに

神社で行われている「茅の輪くぐり」とは、この輪をくぐることで身の災厄を祓い、残りの半年も平穏に過ごせるよう願うというもの。

一般的には三回、輪をくぐるのですが、正面からくぐってまずは左にまわり、次は右に、3回目はまた左にくぐるなど、神社によっていくつかの作法があるようです。

無病息災や日々の安寧を願いながら茅の輪をくぐると、不思議と心が穏やかになった経験のある方もおられるでしょう。

江戸時代の『年中行事大成』に描かれた夏越しの祓の様子。(国立公文書館デジタルアーカイブより)

こうした祓えの行事は古くから行われてきたものですが、奈良時代の『大宝律令』で、6月と12月に「大祓」を行う旨が定められており、こうした風習が現在の夏越しの祓の原型になったと考えられています。

では、このような茅の輪をくぐる風習はいつごろから行われていたのでしょう?

江戸時代の文献では、文化年間に刊行された『年中行事大成』に、現在のものと変わらないような大きな茅の輪が描かれ、人々が参拝に押し寄せる様子が見られます。さらにさかのぼり、室町時代の資料にも登場するため、少なくとも15世紀前半ごろには茅の輪くぐりに近い風習があったよう。

日々の幸せや健康を願う気持ちは、今も昔も変わらないのでしょうね。

涼やかな水無月をいただいて、無病息災を願いましょう。

氷を模した和菓子?

京都では夏越しの祓に、六月の異称を名に持つ「水無月」という和菓子をいただく風習があります。

水無月はもちもちとした食感の白いういろう生地や、葛を用いた生地の上に、小豆の甘煮や蜜漬けをのせてかためた三角形の和菓子。お店により多少の違いはありますが、どれもすっきりと涼しげな雰囲気で、この季節にいただくのにピッタリの上品な甘味です。

室町時代には、夏越しの祓に小麦餅や蒸餅を食べる風習がありましたが、特定の行事菓子はなかったようです。現在の「水無月」が食べられるようになったのは、意外にも新しく、昭和の頃から。

古くは、旧暦6月1日を「氷の朔日」と呼び、氷室に保存しておいた氷を出して食べたり、正月から保存しておいた凍み餅を食べたりして、暑気払いする習慣がありました。それにちなんで、三角形の氷を模した和菓子を京都の菓子店が考案したという説が有力のようです。そのほか、三角形の形は夏越しの祓の語弊を模しているという説などもあります。

今では、すっかり京都に定着した夏越しの祓に水無月をいただく風習。最近は京都だけでなく、色々な地域で水無月を見かけることが増え、全国的にも夏越しの祓の行事菓子として広がってきている印象です。

涼しげな和菓子をいただいて、7月以降の無病息災を願いつつ、今年も本格的になってきた暑さを乗り切りましょうね。

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清絢

食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。

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