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十三まいり

暦とならわし 2026.04.13

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十三まいりとは13歳になった男女が厄落としや開運、知恵さずけや福もらいのために虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)にまいる行事をさします。主に近畿地方や南東北地方にみられ、全国にあまねく分布しているわけではありません。それはまた15歳の成人を2年後にひかえた、いわば一人前になる前段階の行事としておこなわれてきました。つまり民俗的な成人儀礼であると同時に虚空蔵寺院への参詣という宗教的な性格をあわせもち、日にちは4月13日が中心となっています。

民俗的には、たとえば京都の場合、“衣装くらべ”という別名をもち、女の子は西陣や友禅の着物を着飾り、四つ身から本身を着はじめることになっていました。四つ身とは、大人と同じ並幅(なみはば)の反物を使用して仕立てられた着物で、子どもの身長の約4倍の長さの布を裁断して作ります。肩上げや腰上げを施すことで、成長に合わせて丈や裄(ゆき)を調整できるのが特徴です。年齢的には4歳から12歳頃までのあいだです。本身のほうは本裁とも言い、本格的な仕立てという意味です。

京都嵯峨嵐山にある法輪寺(嵯峨の虚空蔵さま)の十三まいりはもともと旧暦3月13日におこなわれていました。それが新暦4月13日となり、いまでは4月初めの日曜日がもっともにぎわうようになっています。法輪寺は桂川にかかる渡月橋(とげつきょう)を渡ったところにあり、帰路、その橋を戻るときには、後ろを振り返ってはいけないとされました。なぜなら、それを破ると授かった福や知恵が逃げてしまうからです。これは京都を中心に江戸時代の中ごろから盛んとなった習俗です。大阪方面からの参詣者も多く、「難波より 十三まゐり 十三里 もらひにのほる 智恵もさまざま」と詠われています。松尾芭蕉も『嵯峨日記』に「虚空蔵に詣ル人往かひ多し」と書き留めています。そのころ、境内では13種類の菓子が売られ、それを本尊に供えたあと、子どもに食べさせていました。桜の時節でもあり、川辺に遊んだり、春の景色を楽しんだりもしたのです。

宗教的には、虚空蔵菩薩は知恵さずけや開運出世などにご利益(りやく)があるとされ、13日を縁日としています。法輪寺は和銅6年(713年)に元明天皇の勅願により行基が創建したと伝えられ、空海の弟子である道昌が承和年間(834年〜847年)に勅願によって川を修築し、橋を架け、船筏の便を開きました。道昌は「行基の再来」として慕われる一方、虚空蔵求聞持法(ぐもんじほう)を百日間参篭して修し、さらに一木を彫って虚空蔵菩薩像を仕上げたとされています。

虚空蔵菩薩は求聞持法の本尊であり、宗門宗派にこだわらず僧侶が修するところとなりました。「虚空」と称するように、バラモン教においては「天の神」であり、「地の神」である地蔵と対をなす菩薩です。虚空蔵求聞持法とは、決められた作法に則って虚空蔵菩薩の真言「のうぼう あきゃしゃ きゃらばや おん ありきゃ まりぼり そわか」を1日1万回ずつ100日かけて100万回唱えるという修行法です。そうした僧侶のための修行法が江戸時代、庶民にとっての「知恵もらい」につながっていきました。

山形県の置賜(おきたま)地方では、十三まいりは「高い山」とよばれる山遊びと結びついていました。集落を見下ろす小高い山にのぼり、持参した酒や重箱弁当を飲み食いし、1日を楽しくすごしました。そうすると運が開け、願い事がかなうとされました。他方、東北地方では一般に成人のあかしとして「成人登山」がおこなわれていました。一種の通過儀礼で13歳から15歳くらいの男子が行屋にこもり、精進潔斎をし、修験道の先達(せんだつ)に導かれて出羽三山などに登拝していました。しかし、明治5年(1872年)に修験道が廃止され、出羽三山に代わって近くの白鷹山に登るようになりました。そこには虚空蔵菩薩がまつられているところから、十三まいりにつながったという説も出されています。置賜地方では、明治10年代から大正時代にかけて十三まいりが盛んになったと伝えられています。

主要参考文献

佐野賢治1991「十三参りの成立と展開―特に置賜地方を中心に」佐野賢治編『虚空蔵信仰』雄山閣、5-24頁。
中村雅俊1991「十三まいりの成立―嵯峨虚空蔵法輪寺について」佐野賢治編『虚空蔵信仰』雄山閣、25-40頁。
佐野賢治 1996『虚空蔵菩薩信仰の研究―日本的仏教受容と仏教民俗学』吉川弘文館、429-471頁。

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中牧弘允

文化人類学者・日本カレンダー暦文化振興協会理事長
長野県出身、大阪府在住。北信濃の雪国育ちですが、熱帯アマゾンも経験し、いまは寒からず、暑からずの季節が好きと言えば好きです。宗教人類学、経営人類学、ブラジル研究、カレンダー研究などに従事し、現在は吹田市立博物館の特別館長をしています。著書に『カレンダーから世界を見る』(白水社)、『世界をよみとく「暦」の不思議』(イースト・プレス)、『こよみの学校』全5巻(つくばね舎)、編書に『世界の暦文化事典』(丸善出版)など多数。

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