こんにちは。暦生活編集部です。
今日は二十四節気の「穀雨(こくう)」についてのお話です。
今年の春は、いつもとは大きく違う季節になりました。
日々溢れる情報の取捨選択に疲れて気持ちが沈んでいたころ、上をむく時間をくれたのは桜でした。近所の公園には、見事な桜の木があって、見るたびに元気をくれました。今年ほど、桜を見つめた春はなかったかもしれません。
大阪ではすっかり桜の花びらが散り、爽やかな緑の葉が見えてきました。やっぱり少し寂しいけれど、「散りぎわも美しい」とこれもやっぱり見惚れてしまいます。同時に、これから暑い夏がやってくるのだと、季節の移り変わりを意識するようになりました。
4月19日から二十四節気は「穀雨(こくう)」になります。 「穀雨」は、穀物をうるおす春の雨が降るころ。 昔から、種まきの好機とされてきました。穀物だけではなく、いろんな草花も春の雨をあびて、ぐんぐん育っていきます。 穀雨は単に雨の季節というわけではなく、「植物を育てるあたたかい雨が降る季節」です。
植物が育つのに欠かせない「春の雨」は、昔から大切にされてきました。雨の日はお気に入りの傘や好きな長靴を身につけていても、やっぱり少し憂鬱な気持ちになりますが、この雨が季節の景色をつくっていくんだと思うと、いつもより広い心で雨の日を楽しめそうです。
春に降る雨は、人々の生活の中でとても大切にされてきたため、いくつかの綺麗な名前がつけられています。
まずは「桜雨(さくらあめ)」。その名のとおり、桜が咲くころに降る雨を、桜雨と呼びます。桜が散ってしまうんじゃないかと少し心配になりますが、雨に濡れる桜も、風情を感じていいものです。透明なビニール傘越しに見上げると、雨と桜の共演が楽しめそうですね。
次に「春霖(しゅんりん)」。霖(りん)は長雨のことで、春霖は春の中頃から春の終わりにかけて降る長雨のことです。春は「春霖」ですが、秋の長雨は「秋霖(しゅうりん)」といいます。どちらも季節の長雨ですが、冷え冷えとする秋霖がどこか寂しい風情があるのに対し、春霖は花の蕾をふくらませてくれる、明るい印象です。
最後は「春夕立(はるゆうだち)」。春に降る夕立のことで、「春驟雨(はるしゅうう)」ともいいます。夏に近くにつれ積乱雲が発達し、激しい雨が降ることも。
他にも、草や木をやさしく潤す「甘雨(かんう)」、穀物が育つのに適した「瑞雨(ずいう)」などの雨の名前があります。繊細な季節の移ろいが生んだ雨の言葉はどれも綺麗で、でもちょっぴり儚くて、とても日本らしい。季節はこれから夏へと変わりますが、その合間に、梅雨がやってきます。梅雨にも、雨にまつわるきれいな言葉があるので、またご紹介したいと思います。
優しい春の雨が、降り注ぎますように。
※二十四節気(にじゅうしせっき)は、日本の1年を24等分し、立春からはじまり大寒で締めくくられる、約15日ごとに移ろう細やかな季節です。
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