ゆく夏の思い出に、冷たい白玉
暑い日が続きますね。が、立秋です。
というわけで、残暑お見舞い申し上げます。
暦は巡って、早くも秋。秋の気配はまだまだ見えてきませんが、これからは少しずつ、でも確実に、夏が勢いを失っていくときです。そんなバカな。まだ夏のあれや、これだってできていないのに。もう少し待って、行かないで、夏。

そんな去りゆく夏をしっかりつかんで、あともう少しだけでも味わっておかなければ。
そこで、ツルリもちもち、懐かしの白玉を作って食すのはいかがでしょう。白玉粉を水でちょいとこねて、茹でて冷やしたら、アラもう出来上がり。もっとも手軽に、そして手早くできる夏のおやつです。
冷たくてやわらかくて、暑さで食欲があまりないときだって、白玉なら食べられます。白玉自体にはとくに味がないので、添えるもので味のバリエーションをつけるのも自在。アイデア次第でいろいろな味を楽しめます。

白玉粉は、もち米を粉にして、水にさらして作ったもの。冷たい白玉団子を「寒ざらし」と呼ぶのは、白玉粉、すなわちもち粉を寒中にさらして作るからですね。ついでながら、もち粉が白玉粉なら、米粉は上新粉。こちらは串団子などを作るのに使う粉で、「もちもち」ではなく、「シコシコ」した歯応えがあります。
さあ、冷たい白玉団子を作りましょう。用意するのは、白玉粉と水、それに砂糖をほんの少し。ボウルに入れてこねたら、小さく丸めて茹でます。鍋底から団子が浮いてきたら、さらに一分弱茹でて、網杓子ですくい、氷水へ。氷水にすぐ浸けることで白玉団子がキュッとしまって弾力が出ます。砂糖を少し加えて作ると、時間をおいても固くなりにくいのです。

それではどの味で食べましょうか。いちばん簡単なのが、果物缶詰と一緒に食べる「フルーツカクテル白玉」。缶詰を冷やしておけば、涼し気で彩りのいい白玉に。白蜜で食べるところが、寒ざらし気分です。

また、冷たくしておいた茹であずきといただく冷やし汁粉風の白玉も絶品。定番中の定番ですね。もちろん、自分であずきを茹でれば、ぴったり好みの味に仕上がります。
ほかにも、寒天や赤えんどうと組み合わせるのもいいし、かき氷に添えれば、氷で更にしまった白玉団子が味わえます。冷たくないけど、ラーメンやうどんにトッピングしても、なかなかの実力を発揮してくれるのが白玉。アイデア次第でおいしさが広がります。

この夏が行ってしまう前に、もう一度だけでも涼しいおやつの思い出を。
夏の疲れが、ひんやり冷たい白玉で和らぎますように。

平野恵理子
イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。
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