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七十二候/温風至あつかぜいたる

二十四節気と七十二候 2022.07.08

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半夏雨(はんげあめ)は梅雨の終盤に入って降り続く雨で、大きな災害をもたらすため昔から恐れられてきた雨です。

梅雨はしとしとと静かに始まりますが、終盤に向かうにつれて激しくなり、荒れてきます。連日降り続くことで川が氾濫したり、土砂崩れがおきることから「荒梅雨(あらつゆ)」ともいいます。

そして「送り梅雨(おくりづゆ)」という言葉にはこれ以上被害を出さないよう、早く送り出したい、見送りたいという願いがこめられています。

七十二候の「温風至(あつかぜいたる)」は7月7日頃ですが、梅雨明けは年によってかなり変動があります。たとえば関東では、2019年は7月24日頃、2020年は8月1日頃、2021年は7月16日頃、そして2022年はなんと6月27日頃でした。

「日月清明」という言葉をご存知でしょうか。これは以下の祝聖文(しゅくしょうもん)を四文字に縮小して表現された言葉で、灯籠や石碑に刻まれて各地に残されています。

天下和順(てんげわじゅん)
日月清明(にちがつしょうみょう)
風雨以時(ふうういじ)
災厲不起(さいれいふき)

──祝聖文 仏説無量寿経

祝聖文は季節がずれることなく順当にめぐること、雨や風が時を得て災厲(さいれい)がないことを願う祈りの言葉です。精妙な季節のバランスが崩れたり、ずれたりすることで作物が育たずに飢饉になったり、災害に見舞われて命を落としたりしてきた長い歴史があり、順当な季節の巡行を願う人々の切実な思いが伝わってきます。

七十二候では「温風」と書いて「あつかぜ」と読ませているように、実際には熱風です。梅雨明けは、朝からむわっと暑くなるような日が数日続き、じりじりとした暑さが始まります。梅雨のさなかに夏至を迎える日本では、ようやく本格的な夏の始まりです。重たく垂れ込める黒い雲がなくなり、白く明るい夏の空に変わるので白南風(しろはえ)と言ったりします。

梅干しはこの晴天続きの頃に天日干しして完成します。ところで梅雨の始まりを告げるのは栗の花ですが、梅雨明けの目安とされる花はご存知でしょうか。

それは、百日紅(さるすべり)です。百日紅は梅雨明けから秋の初めまで百日間咲き続けることから、この名があります。真夏の炎天に負けずにチリチリと咲き続ける花に毎年、励まされます。

写真提供:高月美樹
炎天の 地上花あり 百日紅 虚子

梅雨の時期は湿度も高くなっているので蒸し暑く、熱中症になりやすい時期です。梅干しを漬けるとあがってくる梅酢は塩分とクエン酸がたっぷり含まれていますので、水に少量の梅酢を加えて飲むのもおすすめです。

「梅雨寒(つゆざむ)」という季語もあるように気温は低いのですが、湿度が高いため、つい薄着をしてしまい、身体を冷やしてしまいがち。そんなときはひじきや干し椎茸、高野豆腐などの乾物類がおすすめです。肌のトラブルを解消し、冷えた身体をあたため、新陳代謝を高める効果があります。

天日干しをしたものには、太陽のエネルギーが入っています。元々、乾物類は冬の保存食として発達した伝統食。むかしの人たちの知恵の結晶ともいえる日本の財産。カルシウムや鉄分、アミノ酸やビタミンDなど、生の食品にはないすぐれた栄養価があります。

文責・高月美樹

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高月美樹

和暦研究家・LUNAWORKS代表 
東京・荻窪在住。和暦手帳『和暦日々是好日』の制作・発行人。好きな季節は清明と白露。『にっぽんの七十二候』『癒しの七十ニャ候』『まいにち暦生活』『にっぽんのいろ図鑑』婦人画報『和ダイアリー』監修。趣味は群馬県川場村での田んぼ生活、植物と虫の生態系、ミツバチ研究など。

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