寒露 10月8~22日 九月節〈陰寒の気に合って、露むすび凝らんとすればなり。『暦便覧』〉
桶の手ざわり
季節の舞台は大きく廻って、秋が深まるころとなりました。寒露、草に宿る露が冷たく感じるという節気です。秋の収穫真っ盛りの時季でもあります。山の方からは、次第に木々の葉が色づいている様子。平地でも、気の早い木は色づいた葉を落とし始めています。
そんな、日によっては朝晩ひんやりした空気を感じるこの季節。ふと、木肌の温かさを心地よく思うこともあるのではないでしょうか。そこで、桶のお話を。
木製容器の桶は、円形や楕円形に作られています。細長い板を並べて箍(たが)で締め、底をつけたもの。箍は、竹を編んだものや、金属で作られています。
使われる材は、檜、椹、杉など。香りがよく、白木の清潔感もまた清々しいものがあります。
深いもの、浅いもの、また大小もいろいろで、手で持つ小さな手桶から風呂桶まであり、どれも作りとしては同じです。半切桶は、主に寿司桶として使われるもので、半台、あるいは飯台とも呼ばれます。寿司飯をつくるときには欠かせない道具で、多くの家庭の台所にもあるのではないでしょうか。木肌が加減よく水分を吸って、寿司飯が程よく仕上がります。
お風呂で使う手桶も、木製ならではの使い心地。温かく柔らかな木肌が、素肌に優しく触れます。お風呂場に響く木桶の音も、また良きものです。入浴の時間が、より豊かに過ごせるでしょう。
このあいだ、手のひらに乗るサイズの小さな桶を発見しました。発見といっても、よく考えてみれば以前から知っていたもの。「あ、これも木桶なんだ」とようやく気がつきました。
その桶とは、小鯛の笹漬けの容器です。小さな桶に、これまた小さな鯛の身が三枚におろされてみっしりと漬け込んであります。大好物なのに、なぜか今までこの容器を桶と意識していませんでした。小さいながら、しっかり木で作った桶なのです。もしかすると、この小さな桶に入っている愛らしさも小鯛の笹漬けの大きな魅力で、だからこそ木桶好きとしては、大好物なのかもしれません。
イラスト提供:平野恵理子
平野恵理子
イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。
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