◎啓蟄 3月5~19日
和布(わかめ) 海松貝(みるがい) 青柳(あおやぎ) 甘鯛(あまだい) 菜の花(なのはな)甘海苔(あまのり)
ちらし寿司と蛤の潮汁
三月になって、日足もずいぶん伸びました。啓蟄、冬のあいだ地中にこもっていた虫が、穴を啓いて地上へ出てくる時節です。凍てついていた地中も春の訪れとともに緩んできたことでしょう。カエルもトカゲも「やや、春だな。そろそろ起きるとするか」と起きだすようです。
啓蟄の「啓」は、上にも記したように「啓(ひら)く」。「蟄」は虫などが土の中に隠れているという意味。まさに、土中から穴を啓いて虫が出てくるので、啓蟄なのですね。
そんなこの季節は、海で採れる貝がおいしいときでもあります。春といえば貝。なかでも蛤は、食用の貝の中でも最も美味といわれます。ふっくらとした二枚貝に、おいしさが閉じ込められています。味もよければ見た目もよし。おめでたい席にも登場するのが蛤の潮汁です。
ちらし寿司は、木の芽に甘鯛に黄色い卵焼きを飾って春爛漫に。朱塗りの器にたっぷり盛ります。蛤の潮汁と合わせれば、華やいだ食卓に。
この季節、お寿司屋さんへ行っても握ってもらうのは貝ばかり。「そろそろ貝祭り、行く?」そんな打ち合わせをして、親しい友人といそいそと貝を求めて街へ出かけます。寒いあいだは部屋に閉じこもってばかりいたのに、これではまるで啓蟄の虫と同じです。
文・イラスト 平野恵理子

平野恵理子
イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。
