おはようございます、こんにちは。エッセイストの藤田華子です。
”パトロール”と称して散歩に出かける習慣がある私たち夫婦。珍しい苗字の表札に興奮したり、夫に「この花なーんだ?」とクイズを出したりして歩きます。夫が桜と梅の違いもあいまいだというのにはびっくりしたのですが(たぶん、いまもわかっていないと思います)、数少ない、彼が自信を持って名前を言えた花のひとつがチューリップです。
ちょっと古いデータなのですが、2007年に行われたNHKの放送文化研究所の調査では「日本人の好きな花」の1位は桜、次いで2位はチューリップでした(ちなみに3位バラ、4位コスモス、5位ひまわり)。
オランダの花というイメージが強いチューリップは、実はトルコが原産国です。チューリップの語源はトルコ語のターバン(チューリバム)が変化したもので、チューリップは富や権力、尊敬の象徴として高貴な花とされていました。約1500年前の6世紀終わりごろ、トルコの壁画などにチューリップが描かれていた記録が残っているそうです。
16世紀に、あるオランダ人の手によってヨーロッパに広まっていったチューリップは、上流階級が鑑賞する花として人気を呼び、「チューリップを収集していない家は趣味が悪い」とまで言われることもあったそうです。そのうちに、チューリップの品種改良が自分たちの手でできることを知った庶民も関心を寄せるようになっていき、ヨーロッパ全土でチューリップの改良ブームが起きるのです。
この改良ブームがきっかけで、オランダである事件が起きたのをご存知でしょうか?
その事件とは、チューリップ・バブル(チューリップ狂時代)。
1637年オランダで、チューリップの球根の価格が高騰し暴落した事件で、経済に大きな影響を与えました。平和の象徴のように健やかな花が、なぜ事件のひきがねに⁉︎と思いますよね。品薄になりがちな花という理由から、チューリップの球根で先物取引が流行したり、投機家たちが利益を見込んでチューリップを大量に購入したりしたのです。紙幣のように、食べ物や家畜などとチューリップが交換されることもありました。本来の価値以上に値段がふくれあがったチューリップ。
しかしそんな状況は長くは続かず、1637年2月3日、一夜にして大幅に価格が下落します。およそ3,000人がチューリップの借金を返せなくなってしまったのがことの顛末です。
ただオランダ国内ではチューリップの買い手がいなくても、ヨーロッパ全土ではチューリップはやはり高値で売買されていたため、このチューリップ・バブル事件がオランダ経済へ及ぼした影響はあまり深刻ではなかったそう。かわいい花が悲しい過去を背負うことなく、よかったです。
ひとえにチューリップといっても、花びらが丸いもの・尖ったもの・フリル状のもの、赤・黄・オレンジ・白・緑・紫などの単色や複数の色のものなど、なんと数百品もの種類が!
もちろん人間の手による品種改良もありますが、生物の進化に想いを馳せると、彼らがいま咲き誇っている姿は生き物としての色々な事情や都合ーー外敵から身を守るとか、少しでも効率よく日光を浴びるためとかーーを通過してきた答えなのだと気づきます。散歩の際にそんなことを考えてみると、生き物を尊敬する気持ちが湧いてきていつもの道を歩く楽しみもひとしおです。
春は生き物がみずみずしく輝き、いきいきと動き始める季節。感染症対策を行ったうえで、散歩に出かけてみてはいかがでしょう。
藤田華子
ライター・編集者
那須出身、東京在住。一年を通して「◯◯日和」を満喫することに幸せを感じますが、とくに服が軽い夏は気分がいいです。ふだんは本と将棋、銭湯と生き物を愛する編集者。ベリーダンサーのときは別の名です。
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