関西に住むようになって今年で20年、漬物男子の田中友規です。
大阪の地下街、迷路。
昼から酒飲んでる人、多すぎ。
知らんけど、って最後につければなんでも許される。
引っ越してきた当初は数々のカルチャーショックがあったわけですが、 とりわけ驚いたのは関西の食文化です。
串カツも美味しいけれど、まずソースが異常に美味い、
お好み焼きも美味しいけれど、焼きそばが死ぬほど美味いし、
うどん出汁が美味しいけれど、カレーうどんの方がもっと美味い。
うまいやろ、ええやろ、すっきやろ、と
東京からきた若者に、みんな惜しげもなくお金と時間を使い、24時間働いてるような先輩たちが毎晩色んな店に連れて行ってくれました。
中でも思い出深いのは、仕事の打ち上げで連れていってもらった鯨のはりはり鍋。
関東ではほとんど食べない鯨肉にも驚いたが、具材は水菜だけという
シンプルな構成にも驚いた。
脂身の多い鯨肉を煮込み、さっと鰹出汁にくぐらせた水菜を巻き付けるだけ。
噛めば噛むほど肉の旨味が出てくるし、軽く振った粉山椒がすっと爽やかに香り、 名前の由来にもなっている「はりはり」した水菜の食感は、 関東人の僕にはとても新鮮で、 質素ながら隙のない、この鍋がすっかり気に入ってしまいました。
今では日本全国どこでも手に入る水菜は、特に珍しい食べ方があるわけでもなく 鍋のスターティングメンバーとして悠然と構えて、今日もどこかしらの家の鍋で はりはりの食感を楽しませている。
そんなありふれた水菜に、つい先日驚かされたのが
前から気になっていた近所の中国料理の店で出てきた漬物だ。
特に珍しくもない水菜を浅漬けにしただけかと油断していたところに、 その鮮烈な香りに目眩がした。
キリッと冷やしたその水菜の漬物は、白酢の酸味と同時に花山椒の香りがブワッと 鼻を通り抜ける。
塩水の脱水効果で見た目こそくたっとした水菜だが、 繊維のはりはり感は健在。奥歯で噛み締めるたび、レモングラスのような甲高い芳香もある。
ああ!こんな美味い漬物があったのか、と一人、頭を抱え、
その日は、いろいろな新しい料理も楽しんだのだが、
それ以来、思い出すのは水菜の漬物のことばかり。
あの水菜、美味しかったなぁ・・・悔しいなぁ・・・
頭の中で、レシピを想像し、あれを入れるのか、それともこれか、と
考えているうちに、スパイスや香味油など次々注文してしまい、
家のキッチンはすっかり中国料理店の厨房です。
3%くらいの塩水に、花山椒を漬け込んで香りを移し、
中国南方の香味油「木姜油」を加えたところに水菜を浸します。
我が家の漬物ポットPicklsstoneでプレスして、一週間ほど味と香りを染み込ませると 自分なりの、オリエンタルな水菜の漬物が出来上がりました。
すっかり柔らかくなった水菜ですが、この状態でもはりはり食感は健在。
このままでも十分美味しいのですが、中国では漬物を餃子の餡にしたり、 鍋に入れるのも珍しくないことをヒントに ラム肉と水菜の漬物で、「新・はりはり鍋」を考案してみました。
ひらめの一種である大地魚の干物でスープを取って、癖の強さを楽しむお鍋です。
ラムのムワッと立ち上る獣感のある香りに、
すぅっと通り抜けるそよ風のようなハーブとスパイスの香りを纏った水菜、 さらに干物の磯の香りが旨味を増長させ、力強い大陸の味を感じてなんとも旨い。
この鍋のおかげで、水菜の漬物への溜飲を下げることができ、
「当たり前のもんをもっぺん疑って、新しい切り口見つけるんやで」と
企画のコツを会社の先輩たちが教えてくれたのを思い出しました。
あっさりすっきりの、あの日食べた大阪の味とは違いますが、
こんな水菜の食べ方もおもろいんちゃいますかね、先輩。
メイン写真提供:田中友規
田中友規
料理家・漬物男子
東京都出身、京都府在住。真夏のシンガポールをこよなく愛する料理研究家でありデザイナー。保存食に魅了され、漬物専用ポットPicklestoneを自ら開発してしまった「漬物男子」で世界中のお漬物を食べ歩きながら、日々料理とのペアリングを研究中。
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